【もしも未来を見れるなら】
「未来ってどういうことだと思う?」
彼女はおもむろにそんなことを言った。
「未来は……未来なんじゃないの?」
未来に代わる言葉を見つけられずに、当たり前のことを言ってしまった。彼女は笑って続ける。
「いや、そうなんだけど。うーん、なんて言うんだろう。……例えば、今から見て明日って未来じゃん? でも明日になったらもうそれは『今』になるよね」
なんだかこんがらがってきた。けど、確かに言いたいことはなんとなくわかる。
「……だとしたら、未来って永遠に来ないのかもしれない」
彼女の声が、少し低くなった気がした。とてつもない時間を考えたからか、感じ方の概念に触れたからか、なぜだかぞくっとした。
「大きくて、難しくて、なんか怖いね」
そう言ってソファの背もたれに寄りかかった。冷たさが背中に伝わる。うん、と彼女はうなづきながら目を伏せる。
「今の私が明日を覗けたら、それが未来なのかも」
「……じゃあ、もしできたらどうする?」
えー、と困ったように彼女は考え込んだ。唇をとがらせて、わからない問題でも解いているみたいに。
……僕なら、このあとする予定の結果が知りたい、かな。それを言ってしまったら、必ず「なんの?」と返ってくるはずだ。言えるはずがない、まだ。未来が今になるまでは。
心の中への言い訳のように、僕は彼女の横で彼女と同じように考える素振りをしていた。
【無色の世界】
透明で僕は全てをすり抜けて記憶に残れず何も得れず
色が欲しい無色の私は何になれる?認めて欲しいだけなの
「私が悪いのかな」「どこで間違えたんだろ」親の呪いが抜けず
色が世界から消えたら美しい何かを見つけられるだろうか
綺麗な透明に矢が刺さると黒く腐敗しどろり蝕む
跳ね返らない光次は何を色と名付けるか瞬く視界
【桜散る】
ネガティブに生きるのはダメなんですか桜の涙ただちりぬるを
散るから綺麗、花が綺麗、芽吹くのが綺麗もはやその生き方が
散ったら終わりなのかな一年に一度しか見てもらえないのなら
桜散りもうみんな前を向いてる永遠にでも咲いてくれたら
溝に溜まる白綺麗なのを拾って持ち帰りたいお年頃ね
道いっぱいにまばらにさらと落ちているバージンロードみたいだね
【夢見る心】
今のところは文学部行きたいけど仕事考えるとね錆びた
花屋もケーキ屋も飼育員もぜんぶなりたい私はふと消えた
捨てれば楽になれると思ったのに社会は許さない勝手だね
夢見ては憂い見なくても憂い純粋なあの頃を返してと問う
夢見る大人は抉るほどの痛みを伴うなんて知らなかった
【届かぬ思い】
私にとってあなたは紛れもなくヒーローです
私はあなたを知っていますがあなたは私を知りません
幼いながらにあなたに憧れました
イマジナリーあなたを呼びよく一緒に遊びました
いつもあなたの真似ばかりしてはよく笑っていました
あなたはすごい人です
私にとってあなたはヒーローで在り続けます
そのうちあなた以外の人に夢中になることもあるかもしれません
あなたが私を忘れることもあるかもしれません
けれど私はあなたを忘れません
私にはまだイマジナリーあなたがいます
届かなくていいのです
見つけてもらわなくていいのです
あなたがこの星に生きているというその事実だけでいいのです
十分なのです
あなたという唯一無二のヒーローを見てきた私は
あなたの勇気と情熱と優しさのほんの一部を遠い昔にあなたに貰ったのです
それはあなたのかけらとして私の心にいつまでも残っています
あなたというヒーローに出会えて幸せです