【もしも未来を見れるなら】
「未来ってどういうことだと思う?」
彼女はおもむろにそんなことを言った。
「未来は……未来なんじゃないの?」
未来に代わる言葉を見つけられずに、当たり前のことを言ってしまった。彼女は笑って続ける。
「いや、そうなんだけど。うーん、なんて言うんだろう。……例えば、今から見て明日って未来じゃん? でも明日になったらもうそれは『今』になるよね」
なんだかこんがらがってきた。けど、確かに言いたいことはなんとなくわかる。
「……だとしたら、未来って永遠に来ないのかもしれない」
彼女の声が、少し低くなった気がした。とてつもない時間を考えたからか、感じ方の概念に触れたからか、なぜだかぞくっとした。
「大きくて、難しくて、なんか怖いね」
そう言ってソファの背もたれに寄りかかった。冷たさが背中に伝わる。うん、と彼女はうなづきながら目を伏せる。
「今の私が明日を覗けたら、それが未来なのかも」
「……じゃあ、もしできたらどうする?」
えー、と困ったように彼女は考え込んだ。唇をとがらせて、わからない問題でも解いているみたいに。
……僕なら、このあとする予定の結果が知りたい、かな。それを言ってしまったら、必ず「なんの?」と返ってくるはずだ。言えるはずがない、まだ。未来が今になるまでは。
心の中への言い訳のように、僕は彼女の横で彼女と同じように考える素振りをしていた。
4/19/2026, 1:25:35 PM