【特別な存在】
ナンバーワンとは言わないけど特別になれたらいいのにふと祈る
神樣がこの世界を創ったのは寄りかかりたかったのかななんて
【バカみたい】
「犯人はあなただ!」
探偵が勝ち誇ったように言い放つ。どよめく群衆は刺すような視線を犯人に向ける。近くの時計は規則的に音を立てている。意気揚々とアリバイだトリックだ、犯人の残したミスだのをだらだらと並べ始める。全てを語り終わると、日課を終わらせたような満足した顔で一直線に犯人を見つめていた。
「こんな大昔からあるような展開、いつまで擦るんだろ。もうみんな飽きてるでしょ」
つまらなそうに画面を見ながら、バカみたい、と彼女はつぶやいていた……。
あれはいつだっただろうか。少なくとも一年は経っている。現実的に考えて、今この時代、この国で探偵が推理を披露することなんてない。
「バカみたい」と彼女が言ったあの環境が現実だったらどんなに良かっただろう。登場人物の中に必ず被害者と加害者がいるのだから。
彼女が死んで、半月。轢いた犯人も見つからないこの世界で息をしていることが、ただただ辛くて痛かった。
本心を考えてみれば、「死」という言葉が簡単に口をつたった。どこか冷めていて口の悪い彼女なら、「バカみたい」だと言うだろう。
【二人ぼっち】
「たとえ世界中が敵になっても、君を愛し守り続けるよ」
かゆくなるような王道すぎる台詞を、恥ずかしげもなく言う君。思わず笑いそうになった。
桜がざわざわと揺れる三月。晴れすぎず、曇りすぎないちょうどいい空を流れる桃色の風が首に触れる。
「世界中を敵に回すくらい私が極悪人になるって言いたいの?」
「いや、そういう意味じゃ……」
意地悪に言った言葉もまじに受け取ってうろたえて。ほんとに真面目なんだから。
「嘘嘘、ありがとう。じゃあ、二人ぼっちだね」
火照りを隠すように手で顔をなぞって言う私を、君はすごく嬉しそうに見つめていた……。
私はもう君に触れられない。言葉をかけることも、会うこともない。見るだけだ。合わない目、差のある温度。
そんな私に君はこう言った。
「なろうよ、いつか言ってた二人ぼっちに。君と僕は一人じゃないんだから」
【夢が醒める前に】
ねえ待ってください。なんでそんなに生き急ぐんですか。どうせ醒めても、バイトに行くだけのつまらない日なんです。
俺にとってはそうじゃない? それはそうかもしれないけど……。でも、せっかく会えたじゃないですか。もっとゆっくりしていってくださいよ。私はもっと、……あなたと一緒にいたいんです。
…………この際だからもう言っちゃいますけど、好きです! あなたが! あー……人生初告白夢の中でやっちゃいました。恥ず……。
もう、無視しないでくださいよ。死んだらもう会えないんですよ、私とも。別に寂しくないって……言ってくれるじゃないですか。私は寂しいのに。
いいじゃないですか、夢が醒めるまでは。現実じゃあ会えないんだから。お側に置いてくださいよ。
夢が醒める前に夢だと気づいたらまずはあなたのまつ毛を知りたい
【胸が高鳴る】
早咲きの桜が美しい季節、あなたはきっと花粉に悩まされているでしょう。拝啓なんて書くほど改まった仲ではないのでありませんので割愛します。
春は出会いと別れの季節ですね。私は新たな友人との出会いに笑みをこぼし、旧知の想い人との別れに哀惜の念を募らせています。
なんて、文豪のように書いてみましたが、ただ春休みが始まったというだけです。一年間過ごしたクラスは、やかましくて迷惑で。当たり前で愛おしいものだったと感じています。毎年のことなのに、慣れない寂しさがまだ胸に残っています。
来年もまたこう思うのでしょう。去年もその前も、ずっとそうだったように。毎年が特別だなんて、なんて恵まれているのでしょうか。いろいろな感情でいっぱいの胸が高鳴ります。
あなたの春は、どんなものですか。
では、お元気で。