筑紫菜月

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8/28/2024, 12:27:24 AM

雨に佇む


手を広げ
落ちてくる雨を受けとめながら歩いた

やっと降ってきた雨は
泣けない私の涙みたいで

泣いているつもりになって
落ちてくる涙をぬぐいもせず
天を仰いだ

心が麻痺しているのなら
悲しみも苦しみも感じないはずだ
なのに
悲しすぎて可笑しかった
どうどうと雨は流れた

部屋に入りなさいと言われたけれど
私は泣きたかった

雨に打たれ
雨に佇む

服は濡れたけど
心は乾いたまま
風邪をひいたのは
心だった

たまに人のことで泣くときがあるけれど
自分の悲しみでは泣けない

豪雨が来ると
ああ
私の悲しみが氾濫していると思う

泣けない私の悲しみが
繰り返し降ってくる

悲しみはおそろしい

ポツポツと降ってくる雨に踊る

薬じゃ悲しみは癒えない
心は誰にも救えない

強く
強く
抱きしめてほしくて

ずっと雨を待っていた

ポツポツと降ってくる雨に佇む
為す術もなく
雨に佇む
















































8/23/2024, 1:06:58 PM

海へ


海へ来たものの
海を見たいわけではなかった

長いこと忘れられない
たからもののような思い出が
胸の奥に仕舞ってあり
箱を開くようにして取り出しては眺めるのだった

重ねてきた思い出を見ることでがんばって来た

過去のものだという認識ができないと
いつまでも思い出にはならないものだ

それは恋が終わり
泣いたあとになって
初めて見つけることができるような類のものだった

失恋をしたわけではない
人生が上手くいっていないわけでもなかった

心に淀んたものがたまると
私は海へ行った
その時は気づかなかったが
思い返してみれば
海へ行けばいつも心が洗われるような気分になって帰ることができた

海はいつも心を真っ更にしてくれた

今はもう海へ行く必要はない
昔よりも心おだやかに過ごせるようになった
つらいことが無いわけでもないが
苦しかった思い出も役に立っている

幸せだった時に帰れるとしても
過去に戻りたいとは思わない
過去にもつらいことはあったのだ
それが却って今を善くしているのかもしれなかった

捨てたいものがあるならば海へ行け
泣きたいならば海へ行け
波が繰り返し持ち去ってくれるだろう
もう何もないくらい空っぽになったら
家に帰ろう
心の中の家に







































8/23/2024, 7:50:12 AM

裏返し


素直になれなくて
反対のこと言ったりする

素っ気ないふりも
興味ないふりも

あなたへの言葉や態度は

ぜんぶ裏返し


どうか気づかないで



































8/21/2024, 12:47:07 PM

鳥のように


空を行く鳥のように
自由に羽ばたいてみたいと思っていた

あの鳥たちも
生きるのに必死だとは思いもしなかった

籠の中で生まれて死ぬ鳥は不幸だろうか

その世界しか知らないのなら
案外しあわせなのかもしれない

空を飛ぶ鳥に憧れるのは
その昔
人の祖先にも羽があったからだと聞いたことがある

それを信じていた幼い私は

今も
鳥のように
あの空を泳ぐように

風を切って
飛べる日が
やってくると思っている

生きものが死ぬとき
魂が抜けたら
その分だけ軽くなるんだって

魂になって
高いところへ
すごい速さで
飛んで還ってゆく

たぶん
鳥のように





































8/17/2024, 12:07:14 PM

いつまでも捨てられないもの



あの人に愛された思い出























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