高校三年生の夏。
周りみんなが目標を定めてそれに向かって努力しているなか、俺は卒業後の進路を決めかねていた。
家は貧しくもなく裕福でもなく。
勉強は好きな方だが、これといって得意だったり突き詰めたいと思えるようなものがある訳では無い。
大学に行くのになんの目標もないようでは高い学費を払って通う意味が無いだろう。
就職もいいけど、大学を出ておいた方が安定した職に就けるから高卒はやめておけと親戚から強めに言われていた。
単純に高卒の求人が少ないのも理由のひとつだ。
俺はこのような屁理屈をこねて進路を決めあぐねているのだ。
焦りはあるのになんにも行動しない。
そんな自分に嫌気がさして、やる気もなくただ校舎の外をうろついていた時に君は現れた。
「なーにしてんのっ」
「うわーっ!」
「ちょ、声でかいって!」
彼女は驚く僕の手を引いて陰に隠れる。
「えっなになに」
「静かに」
彼女に言われたとおり、僕は一旦静かにすることにした。
するとどしどしと聞き慣れた音が聞こえてきた。
これは確か生徒指ど
「おい塚本ー!!どこいったぁ!」
生徒指導の教師だ。
「塚本ー!!おい!話が途中だぞ!!!」
足音が異次元に大きいことで有名なうちの高校の生徒指導は声もとんでもなくでかいらしい。
足音がどんどん近くなってくる。
僕は隣で小さく体育座りをして怯えているようにもみえる彼女に気になったことを聞いてみた。
「ねえ、お前たしか塚本だよね、なんかやらかしたの?あいつ相当キレてそうだけど」
「違う、やらかしてない、進路相談の途中で逃げ出してきたの」
「は、?やばいじゃん なんでそんなこと」
「だってあいつが……!」
「誰があいつだって?塚本!!なにしてるんだ!」
「げ」 「うわ」
「何が げ だ!さっさと進路の部屋きて話の続き……ん?君、なんでここにいるんだ」
やばい。気づかれた。なんて言お、
「あたしがたまたま歩いてたこいつに一緒に隠れてくれって言ったんです!」
「そうか……、とにかく行くぞ!話はそれからだ!」
「いぃぃやぁぁだぁぁぁ」
そう叫びながら塚本は生徒指導にからだを引きずられるような形で去っていった。
なんだったんだ今の。
さっきまであんなにも騒がしかったここには一人が取り残され、夏にしては涼しい風だけが吹いていた。
それから2日後のの昼休み、いつものように校舎裏のベンチでパンを齧っているとまた塚本に会った。
「やぁ」
「うわ!」
「あっはは!また驚いてる」
「驚かせるようなことするからだろ!」
「えへ!てか隣座っていーい?」
「いいけど、なんで?」
「なんとなくだよー、昼休みって暇だし」
「そうか」
よくわかんない人だなぁと思いながら腹にパンを詰め込む。
今日の昼ごはんは学校の購買で買った、オレンジが練り込まれたコッペパン。
これが中々美味くて、お気に入りになりつつある。
150円で買えるのは学生にはとてもありがたい。
「そういえば、あの時なんで進路相談から逃げ出すなんてことしてたの?」
「あいつがあたしの進路を根本から否定してくるから。あんなのは相談じゃない。自分の思い通りにならないからあたしのこと言いくるめようとしてるだけ。なんもわかってない。」
これ聞いたらまずかったかも……
「あたしは 」
#6 『行き先が違くとも』
2025.8.22 君と飛び立つ
・2025.8.22 書き途中です。主人公は塚本と出逢い、彼女と話をすることで自分を深く見つめ直すことになります。主人公は自分 だけ の力で飛び立つのでしょうか。
感情は水の様に揺れ動く。
私はそれに流される。
昼休み。私は1人でお弁当を食べている。
ざわめく教室で、私だけが1人ぼっち。
少し寂しい気もするけれどこれでいいんだ。
私には友達もいないし、人をご飯誘う勇気もない。
勿論誘ってくれる人もいない。
そんな私には、密かに好いている相手がいる。
その相手はクラスの人気者で。
優しくて。かっこいい。
私なんかが話せるような人ではない。
その日の放課後、私は教室に残って日直の仕事を片付けていた。
もう一人の日直は 部活があるからごめん と、何もせずに帰ってしまった。
頼まれたら断れない。
この流されやすい精神をどうにかしたい。
なかなか終わらない仕事に、辛さを感じ始めた時、
貴方は現れた。
「1人で日直の仕事やってんの?手伝うよ」
日誌を書いている途中でいきなり顔を覗き込まれたものだから、驚いてペンを落としてしまった。
い、いいんですか、?と声が震える。
敬語になってしまった。
「全然いいよ、暇だったし」
と、微笑んだあなたはまだ連絡事項が書かれたままだった黒板を私に言われずとも消し始めた。
他愛の無い会話をしながら仕事を進める。
ありがたいけど、心臓がどきどきする。
好きな人と話をしている という嬉しさが徐々に込み上げてくる。
暖かい日差しを浴びているかのようだ。
日誌を書き終え、黒板掃除を手伝う。
距離が近い。
顔はあかくなってないだろうか。
話が途切れたタイミングで、勇気をだして気持ちを伝えてみようと口を開きかけたその時。
「ここに居たんだ!探してたよ〜!!」
と、1人の女の子が教室に入ってきた。
にこやかに話す彼女は隣のクラスの人気者。
愛嬌があってかわいくてみんなに好かれる人。
私とは似ても似つかない人。
貴方は私と話すよりも何倍も豊かでたのしげな表情でその子と会話をする。
ああ、やっぱりな。
2人はどこからどうみてもお似合いのカップルだ。
なんで今まで気が付かなかったんだろう。
話しかけてもらったからと自惚れていた。
1人でいいんだと思っていたはずなのに。
変化を求めてしまった。
残っていた仕事は適当に終わらせ、急いで教室を出る。
震える声でまたね、なんて言って。
あの子たちから一刻も早く離れたくて、いつもは走らない廊下を走った。
2人は優しく手を振ってくれていた気がした。
なのにそんな些細なことでも嫌味に感じてしまう。
私はなんて最低なんだ。
校舎の陰で立ち止まってふっと息を吐く。
堪えていた涙がとめどなく溢れてくる。
その場でしゃがみこんでちいさな子供のように泣きじゃくった。
頬を伝って落ちる雫が、地面に水溜まりをつくる。
涙で前が見えなくなる。
「もう むりだ……」
深くて暗い水底に沈んでゆく。
#5 『浸る、溺れる』
2024.7.14 優越感、劣等感
・2025.8.22 編集しました。
これまでずっと 言ってきた言葉がある。
これまでずっと 言ってこなかった言葉がある。
「ありがとう」という言葉。感謝を伝える言葉。
事ある毎に言ってきたつもりだ。
何かをして貰った時、一緒に何かをした時。
迷わずに感謝を伝えられる人でいたい。
「好き」という言葉。好意を伝える言葉。
まだ、言ったことがない。
言おうとすると恥ずかしさが込み上げてくる。
でも、貴方だけに伝えたい。
私の想いを伝えたい。
悪意のない真っ直ぐな言葉は、相手に必ず届く。
自分も相手も少しだけいい気分になれる。
私はそう信じている。
だから明日はちょっぴり勇気を出してみる。
素直な気持ちを、貴方に。
#4 『明日からの私』
2024.7.13 これまでずっと
ただひたすらに頑張って周りに食らいつく。
必死に生きようとする。
それが私の日常。
人より劣っていると分かっている。
だから人より努力するしかない。
それは苦しいことだけど、普通の人と同じ生活がしたい。私自身が望んだことだ。
最初から人並みの能力があれば、って何度も思ったけど、そんなこと言ったってしょうがない。
日々の頑張りがいつか実を結ぶと信じて。
もうしばらくは私なりに頑張ってみよう。
#3 『努力と希望の毎日』
2024.6.23 日常
俺のやりたいことはなんだろう。
やってみたいことはたくさんあるけれど、
きっとどれもすぐに飽きてしまうのだろう。
これまでもそうだったから。
全部1度やったら満足。
少し続いても、熱意のこもっていないものばかり。
自分が一生をかけてやりたいと思えるものに、
生きているうちに出会えるのだろうか。
あてもなく考える。
暗い海の底のように、先の見えない将来のことを。
#2 『未確定な不安』
2024.6.11 やりたいこと