Aria40

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8/23/2023, 2:18:00 PM

『海へ』

浦島太郎っていう物語、知ってる?
あの話に出てくる竜宮城って実在すると思う?
私は、あると思ってる。
きっと、黄泉の国より素敵なところ。
え、理由?
だって城から帰ったとき、
地上ではとんでもなく長い時間が経っているでしょう?
てことはさ、
あの子もあの子もみーんないなくなってるってことでしょ?
そんなの、最高じゃん?

だから、探しに行くの。

え、見つからなかったら?
なにいってるの?あるニきマッてるデショ?
だって、
一昨年行った女の子も
その次に行ったお祖母ちゃんも
一緒に行ったお祖父ちゃんも
去年行った男の子も
10か月前の女性も
5ヶ月前の男性も
みーんなみんな

カエッテコナカッタンダカラ。

8/22/2023, 1:02:53 PM

『裏返し』

親が怒るのは愛情の裏返し

兄が着てる服はいつも裏返し

先生が怒るのは期待の裏返し

洗濯の靴下はいつも裏返し

嫌いは好きの裏返し

好きは嫌いの裏返し

私の言葉はいつも裏返し

8/21/2023, 12:53:49 PM

『鳥のように』

鳥になりたい。
あの大空を好きなように飛び回りたい。

そう言うと周りの人はいつも、
「鳥になったら食べ物も、飲み物も簡単に得られなくなるのよ?」
「鳥になったらいつ死んでしまうかわからないんだよ?」
そう返してくる。

食べ物なんて貰わなくてもなんとかしてやる。
いつ死んでもいいと常に思ってる。


こんな鳥籠の中で一生を終わらせたくなんてない。

8/20/2023, 1:45:57 PM

『さよならを言う前に』



春、貴女に初めてあったその日から、私は貴女が大好きです。 



「それで、相談って?」
「えへへー、あのねあのね!さっきB組の加藤くんに告白されたの!!」
「え、、。あ、あー!加藤くんね、なごちゃん好きって言ってたもんね!おめでとー!」
「えっへへーありがとぉ!」

なごちゃんは嬉しそうだった。
連絡が1通来ただけで、私よりも彼を優先するくらいに。

「あ!ちょっと行ってくるねぇぇ!!」
そう叫んで走って行ってしまった。

なごちゃんは私みたいに同性愛者じゃなくて、普通の人だった。
ちゃんと異性を好きになれる人だった。
でも私はどうしてもなごちゃんが好きで、諦められなかった。
もう少ししたら卒業式。
これ以上一緒にいても辛いから、さよならをすることにしてる。
窓から入ってくる風が、やけに冷たく頬を掠めていった。

あっという間に卒業式。
なごちゃんとの関係は変わらない。
なごちゃんと加藤くんも別れていない。

「愛華ちゃん?どーしたの?」
「なごちゃん。ちょっと私の話聞いてくれる?」
「え、?…うん、聴くよ。」

全開にした窓から吹く強い風が
別れの香りと暖かい日向の香りを運んできた。

私はなごちゃんにきちんと向かい合って一息で言った。
「1年の春、初めて逢ったその瞬間から貴女が大好き。同性だけど、私はなごちゃんが大好き。進路は別々だし、こんな私は気持ち悪いと思うかもしれない。だから、さよならをする前にどうしても伝えておきたかったの。」

言いながら、涙が溢れてきた。
「ごめんね、困らせるだけだよね。聴いてくれてありがとう」

なごちゃんは困惑していて、申し訳なくなって教室の前のドアから飛び出した。

「愛華ちゃん!!!!」
突然後ろから聞こえたその声に驚いて立ち止まった

「そのまま、きいて!」
大きく息を吸った音が聞こえた。
「私も、愛華ちゃんのことが大好き!私と愛華ちゃんの好きは違うかもしれないけど、私は愛華ちゃんとさよならなんてしたくないよ!!勿論加藤くんのことは大切だけど、それ以上に私は愛華ちゃんのことが大好きなの!さっきのこと、気持ち悪いなんて思ってないし、嫌いになんてなってない!むしろちゃんと話してくれて嬉しかった!一緒にいるのが愛華ちゃんにとっては苦しいかもしれない。だけど、私は一緒にいたい!!」

そこまで言って息を切らしながら呼吸する音が続いた。

「一緒に、いられない、かな、、?」

悲しそうなその声に振り向きそうになった。
けど、振り向かないで私は返した。

「私は、一緒にいたい…。なごちゃんと、もっとずっと一緒にいたいよ!」

「じゃあ、一緒にいよ?」

思い切って振り向くと、涙で霞んだ自分の瞳のその先に、

春の満開の、桜みたいな可憐さの
夏の懸命な、向日葵みたいな明るさの
秋の隠した、撫子みたいな無邪気さの
冬の静かな、椿みたいな力強さの

笑顔を咲かせた君が立っていた。

8/19/2023, 12:53:56 PM

軽めBL注意報発令!

『空模様』

高校の屋上。天気が良かったから7限目サボって大の字で寝る。
「あぁぁーサイコーの時間だぜぇ、、!!」
「静かに奏汰。今日金曜だけど、どーする?」
「え…いやー遊びに行くのはちょっと。バイトあるし」
「ちがう。分かってるだろ」
「………家族は?」
「高校生になって一人暮らし始めた」
「あー、そうだっ、たな、。」
「で?」
「決まってるだろ。」
そういって俺は真広から顔を背けた。
「そっぽ向かないで直接目を見て言ってほしいなー?」
「……行く」
そう言うと真広は笑った。

帰りのHLが終わってすぐバイト先に向かっている途中
「あ、雨降る。」
唐突に奏汰が呟いた。
「えぇ?あめぇ?サイアクてか何でそーゆーの分かるん?」
「雲だよ雲ー。空模様ってやつ。」
「通り雨だといーなぁ」
「多分土砂降りかな笑笑」
「うーわまじ無理ぃ!」
「真広って本当、雨に親でも殺されたんかって位雨嫌いだよな笑」
その瞬間心臓を一突きにされたみたいな感覚がした。

「あ、、。わりぃ言い過ぎた。」
「…いや?気にすんな」


間が空いた。気まずい間が。


「…雷も鳴るかな」
「あぁ、土砂降りっぽいし。」


そうこうしているうちにバイト先に着いた。
「じゃ、頑張れよ奏汰」
そう言って真広は帰った。


(あーあ全然克服できてねーな…。)
そんなことをうだうだと考えながら、
バイトをいつも通りの笑顔で終わらせて帰路についた。

バイト中からポツポツと雨音はしていたけど、
今はもう土砂降りになっていた。

身体が震えてきた。
指に力が入らない。
頭が全く回らない。
足を動かしづらい。

「あ、これヤバイ。駄目だ…」
人通りの少ない路地で1人。

視界がぼやけた。
傘を落とした。
頭がぼーっとし始めた。
地面に崩れ落ちた。

「真広!!!!」
その声にハッとしたと同時に安心して振り向いた
大きい傘とレインコート,タオル,目隠し,耳栓,薬を持って奏汰が駆けてきた。
「ゆっくり息を吸え。息が戻ったらまずこれ飲め。」
言われたとおりに動く。声は出ない。
薬を飲んでいる間に奏汰が顔や髪を拭いてくれる。
「それから耳栓と目隠しあとレインコート」
「つけた?移動するから背負うよ。」
そうして人目につかない迷路のような路地をまるで自分の庭のように奏汰は走った。振動が伝わらないように気をつけながら。

意識がなくても奏汰の家まで向かっていたようで、
次に気づいたときにはお風呂に入ったみたいにほかほかの身体で
ベッドの上に寝かされていた。
それが気持ちよくて、奏汰が来たことに気づかなかった。
いや、気づいていたけど狸寝入りをした。

「真広。起きたか?……。ごめん、すぐに助けに行けなくて。あんなことがあったのに1人で平気なわけ無いよな。バイト終わるの待ってれば良かった。」
「…俺が間に合うまで、生きててくれてありがとう。」

奏汰は宝物に触れるくらい優しい力で俺を抱きしめて寝た。

俺も抱きしめ返して、呟いた。
「ごめんね。ありがとう…。」

外には2人を見守るような空模様が広がっていた。

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