軽めBL注意報発令!
『空模様』
高校の屋上。天気が良かったから7限目サボって大の字で寝る。
「あぁぁーサイコーの時間だぜぇ、、!!」
「静かに奏汰。今日金曜だけど、どーする?」
「え…いやー遊びに行くのはちょっと。バイトあるし」
「ちがう。分かってるだろ」
「………家族は?」
「高校生になって一人暮らし始めた」
「あー、そうだっ、たな、。」
「で?」
「決まってるだろ。」
そういって俺は真広から顔を背けた。
「そっぽ向かないで直接目を見て言ってほしいなー?」
「……行く」
そう言うと真広は笑った。
帰りのHLが終わってすぐバイト先に向かっている途中
「あ、雨降る。」
唐突に奏汰が呟いた。
「えぇ?あめぇ?サイアクてか何でそーゆーの分かるん?」
「雲だよ雲ー。空模様ってやつ。」
「通り雨だといーなぁ」
「多分土砂降りかな笑笑」
「うーわまじ無理ぃ!」
「真広って本当、雨に親でも殺されたんかって位雨嫌いだよな笑」
その瞬間心臓を一突きにされたみたいな感覚がした。
「あ、、。わりぃ言い過ぎた。」
「…いや?気にすんな」
間が空いた。気まずい間が。
「…雷も鳴るかな」
「あぁ、土砂降りっぽいし。」
そうこうしているうちにバイト先に着いた。
「じゃ、頑張れよ奏汰」
そう言って真広は帰った。
(あーあ全然克服できてねーな…。)
そんなことをうだうだと考えながら、
バイトをいつも通りの笑顔で終わらせて帰路についた。
バイト中からポツポツと雨音はしていたけど、
今はもう土砂降りになっていた。
身体が震えてきた。
指に力が入らない。
頭が全く回らない。
足を動かしづらい。
「あ、これヤバイ。駄目だ…」
人通りの少ない路地で1人。
視界がぼやけた。
傘を落とした。
頭がぼーっとし始めた。
地面に崩れ落ちた。
「真広!!!!」
その声にハッとしたと同時に安心して振り向いた
大きい傘とレインコート,タオル,目隠し,耳栓,薬を持って奏汰が駆けてきた。
「ゆっくり息を吸え。息が戻ったらまずこれ飲め。」
言われたとおりに動く。声は出ない。
薬を飲んでいる間に奏汰が顔や髪を拭いてくれる。
「それから耳栓と目隠しあとレインコート」
「つけた?移動するから背負うよ。」
そうして人目につかない迷路のような路地をまるで自分の庭のように奏汰は走った。振動が伝わらないように気をつけながら。
意識がなくても奏汰の家まで向かっていたようで、
次に気づいたときにはお風呂に入ったみたいにほかほかの身体で
ベッドの上に寝かされていた。
それが気持ちよくて、奏汰が来たことに気づかなかった。
いや、気づいていたけど狸寝入りをした。
「真広。起きたか?……。ごめん、すぐに助けに行けなくて。あんなことがあったのに1人で平気なわけ無いよな。バイト終わるの待ってれば良かった。」
「…俺が間に合うまで、生きててくれてありがとう。」
奏汰は宝物に触れるくらい優しい力で俺を抱きしめて寝た。
俺も抱きしめ返して、呟いた。
「ごめんね。ありがとう…。」
外には2人を見守るような空模様が広がっていた。
8/19/2023, 12:53:56 PM