今でもたまに思い出す。他にやることもなくて、というかやれることがなくて、真っ暗な公園の隅でぼーっと星を見上げていたこと。思いの外たくさん見えた星は、いつの間にか涙と一緒に、視界の外にこぼれ落ちていったこと。あの日空に瞬いていた星たちは、私にとっては何の希望にもならなかった。
──そんな日もあった、というだけのお話。朝、ふかふかのベッドで目覚めて、寝室を出、階段を降りて、リビングで「おはようございます」と声に出す。ほんのり珈琲の匂いを纏ったあの人は、私を見ると、穏やかな声で「おはよう」と返してくださる。私の目の前に、当たり前のように朝食が置かれて、温かいうちに食べるように促される。あの人の作るご飯が美味しいことは、もう知ってる。
一切の乱れが無い黒髪も、凛とした綺麗なお顔も、静やかで低い声も、夜の化身かと思うほどに美しいけれど、あの日の星空とはまるで違う。星空は到底持ち得なかったもの。
私に、あふれんばかりの希望をくれる人。
お題:星が溢れる
君は俺を見下してる気らしいけど、君ほど無垢な目で俺を見てくる奴なんか他にいないぜ? 大体みんな、悪意があるか裏がある。それか迷惑そうな顔かな。
まぁ自業自得って自覚はあるよ、俺そんな良い奴じゃないし。
だってのに君ったらどうよ? 口では俺のことをナメてるだの軽蔑しているだの言うけど、じゃあ俺に向けるその安心しきった目はどう説明つけるの? 警戒心が足りなすぎるよ、君ちょっと人を見る目ないぜ。
だから、そう、俺なんかが君のそれを壊しちゃいけないんだ。カスなりにできることはやるよ。
君の目が恐怖や苦痛を湛えないように。君がずっと、安らいだ顔でいられるように。
お題:安らかな瞳
そこは俺の特等席だけど、別に俺だけの特等席じゃなくていい。
この席を退く気は更々無いけれど。俺を手放そうったってそうはさせないけど。でも、この席に座りたいのが俺だけだなんて、そんなの絶対間違ってるから。
たくさんの人があなたを好いて、慕って、愛してくれたらと願う。
お題:ずっと隣で
好奇心は猫をも殺すとは言うが、我々が知能を持った生命体である以上、抑えようのない知識欲が備わっていることくらいは許して欲しい。
情報収集、真相の究明、知識の吸収、あるいは情勢の把握。いずれも、得手不得手に関わらず要求されることがままある。
そして、どうやら俺はこういった行為を好んでいるらしい。「得手」であるとも自負している。
道理で、必要以上に情報を追究したくなる傾向もある。なるほど、好奇心だ。現に、今もこうしてクライアントの要求以上の情報に手を伸ばそうとしている。知る必要は無いが、手が届くなら知りたくなってしまうのもまた事実……おっと。
ふむ……いや、引き際か。これ以上は猫をも殺してしまうだろう。
お題:もっと知りたい
ある者は「平穏などつまらない」と言う。
──私の人生に相応しいのは、誰も彼も虜になる、絢爛で刺激的な晴れ舞台だけ! 平穏な毎日なんかに構ってるほど、暇じゃないのよ。
またある者は、「考えが変わった」と言う。
──俺はなんでも、とにかくスリルがあった方が楽しいって思ってたけど、今は違うかな。だって平穏な時間も持っとかないと、あの子に会いにいけないからね。
「平穏には代償がある」と言う者もいる。
──平穏はもちろん結構なこったが、こっちだってそのために苦労してんだぜ? 悪かないが、タダで永遠に手に入るモンでもねーんだよ。
もちろん、平穏を好み、そんな日常を愛する者もいる。
──俺はなるべく、平穏の中で生きてたいよ。「じゃあ厄介事ばかり引き受けるの止めたら?」って、言われりゃその通りなんだけど……だって、俺だけじゃなくてみんなにも、平穏があったらいいなって思わないか?
望む者も望まざる者も、平穏を手にするのはかくも難しいようである。
お題:平穏な日常