いす

Open App
12/7/2023, 6:21:38 PM

呪詛を吐くにはうってつけの場所だ。一見して愛だと、一見どころか生涯愛の名を疑われずに墓に埋まる呪いだって、ここで吐くのがいちばんだ。のろい、という言葉が気安く使われるようになって久しい。解呪の話がセットでついてきてほしいものだけど、そう上手くはいかない。救われないままの人間が多数だ。同じように呪われたらどうすればいい。不安の共有だけで気の済むものではないのに。部屋の片隅に置いたベッドに潜り込む。君の体温でとうに温かい。その穏やかな顔を見つめる。穴が空くほど。空いてしまえばいい、君と同じように呪われなくてどうすればいい、と吐き出す。

12/6/2023, 8:29:10 PM

逆さまにしておく。永遠という言葉が嫌いだから。刹那という言葉も嫌いだから。砂が落ちていく。積もっていく。時が計られていく。また逆さまにしておく。これは私しか知らない時計である。私がいなくなればそこで終わりの代物である。永遠を壊さないか?刹那を埋めてしまわないか?二度と再生しないように修繕できないように君との思い出をこの砂のようにしてしまう。どうだろう?全体で見ると結局思い出としか呼べないものだけど、私と共にきちんと終わらせるには、この方法しか思いつかないんだ。

12/5/2023, 8:42:44 PM

目が冴えていけない。そのまま夜明けがきてしまった。冬の星など見えやしない。わたしたちの天使は好きに飛び回っていて、とうとう見えなくなった。悲しくなければいい。痛みをすべて置いていってくれたらもっといい。どう思っていたかなんて、どうしていたかなんて、なにひとつ分かりはしない。そんなことは分かってたのに。そこから私の名前は呼ばなくていいよ。勝手に空を見上げるよ。見上げるには充分の音が、こんなにもゆたかに天から鳴り響いている。

12/4/2023, 7:42:46 PM

見た夢を書き記している。大体400字ほどに纏める。それとは別に日記をつけている。現実に起こったことを書き記す用だ。こちらはせいぜい100字といった程度である。短文SNSのおかげで何となく400字や100字がどれほどの感触なのか、伝わりやすくて助かる。日々が400字と100字に詰められていく。その程度の日々と言ってしまっても良い。400字と100字にそれぞれ頻出する語句しない語句というものがあって、例えば後者には“君”が多いが前者に“君”が出てくることはない。記録を始めてから一度たりともだ。もう5年になる。“君”と使わずとも記せるが、400字の方に一向に出てこないのでどうにも手放すことができない。君、そろそろ出てきてはくれないか。と記して眠りにつくことにする。

12/4/2023, 1:01:25 AM

さてどうするかと君は額に手をやる。夜のうちにここを発てたらまた違っていた話だったのかもしれない。なしくずしに情を語り合い、愛を交換した。螺鈿に彩られた箱に詰めるには、少しばかり粗雑な愛を。

Next