逆さまにしておく。永遠という言葉が嫌いだから。刹那という言葉も嫌いだから。砂が落ちていく。積もっていく。時が計られていく。また逆さまにしておく。これは私しか知らない時計である。私がいなくなればそこで終わりの代物である。永遠を壊さないか?刹那を埋めてしまわないか?二度と再生しないように修繕できないように君との思い出をこの砂のようにしてしまう。どうだろう?全体で見ると結局思い出としか呼べないものだけど、私と共にきちんと終わらせるには、この方法しか思いつかないんだ。
目が冴えていけない。そのまま夜明けがきてしまった。冬の星など見えやしない。わたしたちの天使は好きに飛び回っていて、とうとう見えなくなった。悲しくなければいい。痛みをすべて置いていってくれたらもっといい。どう思っていたかなんて、どうしていたかなんて、なにひとつ分かりはしない。そんなことは分かってたのに。そこから私の名前は呼ばなくていいよ。勝手に空を見上げるよ。見上げるには充分の音が、こんなにもゆたかに天から鳴り響いている。
見た夢を書き記している。大体400字ほどに纏める。それとは別に日記をつけている。現実に起こったことを書き記す用だ。こちらはせいぜい100字といった程度である。短文SNSのおかげで何となく400字や100字がどれほどの感触なのか、伝わりやすくて助かる。日々が400字と100字に詰められていく。その程度の日々と言ってしまっても良い。400字と100字にそれぞれ頻出する語句しない語句というものがあって、例えば後者には“君”が多いが前者に“君”が出てくることはない。記録を始めてから一度たりともだ。もう5年になる。“君”と使わずとも記せるが、400字の方に一向に出てこないのでどうにも手放すことができない。君、そろそろ出てきてはくれないか。と記して眠りにつくことにする。
さてどうするかと君は額に手をやる。夜のうちにここを発てたらまた違っていた話だったのかもしれない。なしくずしに情を語り合い、愛を交換した。螺鈿に彩られた箱に詰めるには、少しばかり粗雑な愛を。
hallelujahと声が聴こえる。声のようなものが。あなたの耳にはhallelujahとして届くが、あなたに向けられたものではない。それはよくよくあなたも解っている。光と闇の狭間すら手に入れたらあの人はどうなってしまうのだろうかとあなたは怯えている。このhallelujahは光側からの声なのか、闇側からの声なのか。それとも今から失われる狭間の自由の断末魔なのか。祝福と呪いの音である。鉛が貫くその瞬間をあなたは見守っている。ねえ、すべてを失い尽くして、すべてを奪い尽くして、すべてに奪われ尽くして、あなたはどこで眠るというの。