いす

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10/5/2023, 10:56:10 AM

夜半を過ぎればあれは咲く。そうだな、星座に見立てていただいても良い。真実にも寿命があるらしい。わかっているような顔をして、恋人のような顔をして、未来のような顔をして、この身に居座っている。あふれるだけのゆるい光が、あれの輪郭をどうにも煙に巻いて、私にいつまでも空を見上げるだけしかさせてくれない。

10/4/2023, 1:23:53 PM

手を差し出す。彼女が応えてくれる。君はその瞬間にほとんど充分になる。ダンスホールに流れている音楽は君の趣味に合わない。まっぴらだうんざりだと君はタップを刻む。彼女が笑っている。あなたと踊れるなんて夢のようだわ。間違ってない?ねえ、私初めてなの。その手に掴んだ彼女が君のほんとうになっていく。夢から醒めてもその充足を味わい続けて君はベッドを下りる。刻まれるタップに溢れた笑みを忘れるな。踊れ踊れ。踏みしめろ、軽やかに。彼女の不在に耐えられるように。

10/3/2023, 2:59:34 PM

舞台は夕焼けをイメージしている。赤だとか橙だとか紫だとか。n回公演で繰り返される、僕たちの芝居が、まったく別の夕焼けを生み出していく。偶然も奇跡も運命も宿命も望んでいるわけじゃない。それでも。同じカラスが鳴いたら、君にまた巡り会えると信じている。

10/2/2023, 10:18:11 AM

君が要らないといった奇跡を私が引き受けてあげる。君の隣で星を砕き、君の進んだ道を愛して、君が悲しくなったときにその奇跡を使ってあげる。君の嫌がる顔があの綺羅星のごとくはっきりと見えるようだよ。最悪のハッピーバースデー。君は私にいつか言っただろう。最初の奇跡は、俺たちが出逢えたことなのだと。馬鹿らしい。そのあとのおはなしを続けるのに奇跡など不要なのだと。馬鹿らしい。最悪のハッピーバースデー。ろうそくを吹き消して今度こそ星を観よう。私の望んだ小さな奇跡が、いま流れ星になって瞬くから。

10/1/2023, 2:57:49 PM

指折りかぞえて足りなくなって、あなたの指を借りても足りなくなって、たそがれから朝にいたるまで、ふたりで泣いて過ごしたね。ふたりで完全になることなんて叶わなくて、足りないものを補うものも持ち得ずに、終わりの果てのその先へ、何もないわたしたちで行けるだろうか。

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