暮みちる

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11/5/2025, 10:20:41 AM

「時を止めて」

 時を止めて、と言えば私にとっては平井堅の”even if “。歌詞では「時間を止めて」だけど。ひたすら片想いばかりしていた時代、刺さるのはやはり片想いの歌ばかり。恋が成就したこともない私には失恋の歌さえ刺さらずいくつかの片想いの歌を集めて聴いては、私は一生こんな感じなんだろうな、と思っていた。私は誰のグラスも満たせないんだろうな、と。誰かのグラスを満たすために必要な何かが、私には決定的に欠落しているのかもしれないと本気で思っていた。「君のグラスはほかの誰かで満たされている」-”even if “

片想いの歌たちが、”even if “が、やっと遠くなったのは、私の場合、40近くなってからだった。

11/4/2025, 11:01:07 AM

「キンモクセイ」

 金木犀の花はとりわけ好きというわけではなかった、花言葉を知るまでは。

 金木犀の花言葉は「高貴」と「謙虚」。高貴と謙虚を両立できるなんて!高貴でいることはお高くとまることや傲慢なことではない。それは、ふさわしい自尊心や威厳であり、自分の尊厳を守れることだ。自分の尊厳を守れる人は他人の尊厳も尊重する。謙虚であるとは卑屈になることではない。それは、必要以上に目立とうとせず、心柔らかで穏やかに存在することだ。

「高貴」は花が萎れる前に潔く散るようすから、「謙虚」はその芳しい香りのわりに慎ましい花の佇まいからつけられた花言葉だという。

 金木犀のような人になりたい、いや、金木犀の花言葉のような人になりたい。

11/3/2025, 10:52:46 AM

「行かないでと、願ったのに」

父は、その洞窟に入ってしまった。私は足がすくんで動けない。洞窟からは、知らない言語が聞こえる。まるで、怒鳴り合っているかのようだ。その合間に、父の笑い声が聞こえる。やがて、鬨(とき)の声のような雄叫びが聞こえる。そしてまた怒鳴り声。どうしよう。おとうさん、もどってきて、そう言いたいのに、叫びたいのに、喉がカラカラで、唇を動かすことすらできない。どうしよう、どうしよう。

ふと、私は自分が大粒の涙を流していることに気がついた。でも、鼻をすすることもできなかった。洞窟にいる人たちに私が外で待っていることを気づかれたくなかったから。私は、ここでじっと父が戻って来るのを待つしかないと分かってしまったから。私は立ちすくんだまま、涙と鼻水が流れるに任せながら、じっと洞窟の入り口を睨んでいる。父が出てきたら、こちら側に父の腕を掴んで引っ張れますようにと心の中で熱烈に祈りながら。

11/2/2025, 11:44:41 AM

「秘密の標本」

秘密の標本といえば小川洋子さんの「薬指の標本」ですよね…小川洋子さんの小説の仄暗さと湿度ってなかなかクセになります。「博士の愛した数式」しか読んでない方はぜひ他の小説も読んでいただきたいです。
 ちなみに塾講師をしていた時に生徒に貸した小川洋子さんの短編集「刺繍する少女」を借りパクされたのが口惜しいといえば口惜しいですが、彼の、もしくはブックオフに行ったなら誰かの静かな時間のおともになっていればそれはそれでいいかな…

11/1/2025, 10:24:38 AM

「凍える朝」

凍える朝と言えば「オペラ座の怪人」の映画でクリスティーナが早朝父親の墓に行く場面が浮かぶ。灰色の凍った石像、白い雪道、といったモノクロの景色の中際立つクリスティーナの抱える赤い薔薇の花束。ただ、見るたびにクリスティーナの首や胸元が寒くないんだろうかと心配になるシーンだ。(多分めっちゃ寒かったと思う)が、すぐに怪人とラウルの文字通り真剣勝負となり寒そうとかそういう雑念は飛んでいく。

ちなみに「オペラ座の怪人」は女友達の間でラウル派か怪人派かで意見が割れており、現実的な選択をした友人たちはラウル派、ちょっとクセのあるパートナーがいる人は怪人派と綺麗に分かれていたのが面白い。私は、怪人派である。

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