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6/9/2024, 10:46:28 PM

カーテンを開けて、
暖かい黄色の日が差し込んできた時、
私はむやみにほっとしてしまう。
今日も、生きることが許されたのだと

6/7/2024, 11:05:35 AM

『ある日の夕方7時、巨大な彗星が地球に衝突する』
最初は誰もが嘘だと言ったこの噂は、アメリカの偉い学者による正式な発表で現実のものになった。
彗星は規格外の大きさで、地球は壊れると。
全生物、環境が滅びると。
発表は、よりによってその当日だった。

途端、世界は秩序を無くした。
通貨価値はゼロになり、犯罪が横行し、公共手段はもちろん、経済も機能しなくなる。
そりゃそうだ。今日で世界は終わるんだから。
誰もが諦めている。明日を諦めた。

「どうする?」
教室の真ん中、私たち2人は机を合わせてお菓子パーティをしていた。
もちろん学校などあるはずなく、教室には2人きり。
お菓子は近所のコンビニから貰い放題。最期の贅沢。
「どうすると言ってもねぇ」
友達がポッキーを齧りながら言う。
「今から何をしても遅いよ」
時計は4時を指している。あと、3時間。
「本当にこのまま駄弁ってていいのかなぁ」
「いいんじゃない、別に」
「家族に会うとか」
「うーん…面倒くさい」
面倒くさいと来た。こんな時でも友達は友達だった。動揺のひとつでも見せれば可愛いのに。
「お互い様」
そりゃそうだ。

ついに残り1時間を切った。
教室は、というか学校自体、不自然なほど静まり返っている。
この教室に遮光、防音カーテンがついていてよかった。きっと今頃外は、阿鼻叫喚の時刻絵図だから。最期に人間の汚いところを見る必要はないだろう。
それに、私たちを殺す隕石の顔なんて見たくない。
「あー食べた食べた!」
お菓子の袋が机の上に広がっている。
私たちは一生分のお菓子を食べたのだろう。
「なんか、眠くなってきた」
同じだ。お菓子を食べすぎたかな。
「じゃあ一眠りする?」
「しようか」
どちらからともなく、私たちは手を繋いだ。
「おやすみ」
「おやすみ」
目を閉じる。
静かだ、とても。
もし5分前に目覚めたらどうしよう。
そうなったら奴も起こして、笑ってやろう。
カーテンを開け放して、近くのコンビニに走って、2人でビールでも飲もう。
私たち、まだ16歳だけど。




『世界の終わりに君と眠る』

6/5/2024, 2:09:46 PM

がたがた揺れる電車の中で、隣の少女は呟いた。

「みんな、みんないなくなっちゃったよ」

親も兄弟も親友も恋人もペットも、みんなみんな死んでしまった。そんな少女に残った一つの事実を、

少女はまるで、誰にも言えない秘密を打ち明けるように呟いたのだ。

5/30/2024, 1:33:12 PM

「不老不死になった」
あなたは言った。
別に驚かなかった、だって。
「私も不老不死」
「そうなの?」
「うん」
不老不死2人、教室の窓際で笑う。
「じゃあ明日からどうする?」
「そうだなぁ、この退屈な場所から逃げ出しちゃおうよ」
机をコツコツ叩く。
不老不死には狭すぎる、学びの箱庭だ。
「いいね」
「ありったけの食料持って、2人で逃げだそう」
「海に行こう」
「山に行こう」
どこへだって行ける。だって時間は無限にあるから。
明日からでも2人きりで、終わりのない旅をしよう。

5/25/2024, 1:27:26 PM

「傘無いの?」
思わず話しかけてしまった。憂鬱そうに雨を眺めている様子を、放っておけなかったのだ。
「…ない」
一拍置いて、本日の空模様のようにどんよりとした一言が返ってくる。
「じゃあ貸そうか?しばらくやまないよ」
「え、そうなの?」
「うん。それに、そんな所にいると風邪引くよ」
白いシャツが透けてしまっている。見てられない。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
そう言うと、私が差し出した折りたたみ傘を引っ掴んで駆けて行ってしまう。ぺこりとお辞儀も忘れずに。
私は小さな背中を見送った後、手元のビニール傘を開いた。

その翌日、昨日の場所に私の傘が掛けてあった。
『昨日はありがとうございました』
というメモ付きだ。
白いメッセージカードの上で踊る、ダークブルーの文字。私はそれをカバンに入れて、歩き出す。
嘘みたいに晴れ渡った空を見上げながら。

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