窓から見える景色が嫌いだった。
一面の緑、もう飽き飽きしていた。
闇に浮かぶネオンやライトアップの美しさ、
そんなものはスマホの中でしか見たことがなかったけど
惚れ惚れして、心にも灯が点るみたいだった。
夜になると真っ暗になる田舎道
その闇に紛れて、自分がいる意味なんて
いくら探しても見えなかった。
あの頃の俺に教えてやりたい
それでよかったのだと。
窓から見える景色は一面の光
ネオンが光り続けるためには、
灯し続ける人々がいることを知った。
都市を輝かせる、その生贄となるために
自分でも気がつかないうちに燃え尽きる人々。
俺は自分がいる意味のなさに気がついてしまった。
窓を開けると、俺の部屋にも
あの場所と同じ日が差し風が吹く。
それだけで涙が出そうになるだなんて、
俺もそんなことを思うようになれた。
9/12「本気の恋」
本気と書いてマジと読む
恋と書いたらフォーリンラヴ
俺が一生守るから
地震カミナリ エヴァ ゴジラ
(エヴァは敵じゃないって?)
俺たちみんな生きている
生きているからマジ仲間
地元じゃガリ勉ロンリデイズ
想像つかねー?そりゃそうか
悪い仲間も増えたけど
初めてアナタを見た時に
鐘がなるなり心の教会(チャペル)
徹夜で書いたこのpoem
アナタに届けfrom my dream
以上です 僕と付き合ってください
9/11「カレンダー」
ちいさいころからずっと卓上カレンダーに憧れがあった。
あのサイズ感、横長の形、たたずまい…
お店でこれが欲しいと言うと、母はいつも
「どこに置くの?壁掛けがあるじゃん」と言った。
卓上だからいいのにね。
大きくなって自分の部屋を手に入れて、
無印の卓上カレンダーが勉強机に鎮座した。
置いた時は大人になったみたいでとても満足した。
けれど部屋はどんどん汚くなって…
それもプリントや本に埋もれていって、
6月以降めくらなくなってしまった。
…もう買ってません。
9/10「喪失感」
センパイがいなくなった。
センパイの後、俺の隣にぽっかり空いた穴。
それを見て俺たちはみんな泣いた。
センパイはいつも俺たちの少し前にいた。
はみ出しものと言われようと動じず、
小さな体で自分を貫き続けた孤高のひとだった。
センパイは俺たちより8つほど年上で、
この組織の立ち上げメンバーのうちのひとりだった。
立ち上げメンバーは全部で20人いたらしいが、俺は数人にしか会ったことがない。
組織が大きくなるにつれ、ひとりふたりと抜けていったそうだ。
そのうちみんな抜けてしまって、とうとうセンパイだけが残された。
抜けてしまったひとたちの後任を務めるため、俺と同期たちはやってきた。
俺たちはわれ先にと競って顔を出そうとした。
センパイはずっと変わらない姿で、俺たちを迎え続けた。
そして6年ほどかけてこの組織は完成を迎えた。
それから長い月日が流れ、この組織は非常に優秀な運営がされていた。
俺はセンパイの隣で、センパイよりも大きくなった。
センパイは隣の俺に度々こぼした。
オレみたいな古いやつがいつまでもいたってしょうがないのに、
オレもあいつらと一緒に抜けてしまいたかった、と。
だけどもう俺たちとセンパイはずっと月日を共にした。
最近大型新人を迎えた、総勢30人の仲間だ。
ずっとこのまま一緒だと思っていたのに。
センパイに異変が起きたのは繁忙期のころだった。
毎年、寒い季節の終わりになると、粘着質な取引先の大群に悩まされる時期が来る。
今年の相手は特に手強く、センパイは山を越えられなかった。
そのうちに白く輝くばかりだった姿に翳りがさし、
体の一部が働かなくなってしまった。
センパイを気遣ってか、組織には度々メンテナンスが入るようになった。
しかしその日は突然やってきた。
ある日のメンテナンス中。
何の前触れもなく、組織に激震が走った。襲撃か!?
痛みの後に、初めて感じる強い眠気が襲ってきた。
抵抗虚しく俺たちは皆一斉に意識を失った。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
感覚が戻ってきた時、センパイはいなくなっていた。
空っぽになってしまった、センパイがいた場所。
大きな喪失感が組織を包んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「お疲れ様でした。無事に抜けましたよ。」
「あぃあとうございぁす」
ティッシュに包まれて掌に乗せられたとても小さな歯。
虫歯になってしまって少し汚いが、今までよく頑張ってくれたものだとしみじみ見つめる。
1本だけ子供のうちに抜け切らなかった乳歯をとうとう抜いたのだ。
「持って帰りますか?」
「いらないかな…」
あ、でも、小さい時に抜けた歯、カーチャン集めてたな…
実家にまだあるかも。
「やっぱりください。昔の乳歯と一緒にしときます」
歯物語~fin~
9/9「世界に一つだけ」
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