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4/2/2025, 11:30:59 AM

空に向かって息を吐く。
白くなった水蒸気がふわふわと消えていく。
まだ寒いなあ、と思う。

空に向かって深呼吸する。
寝不足の両目に太陽の眩しさが刺さる。
今日も頑張るか、と呟く。

空に向かって大きく伸びをする。
どこかで雀の鳴く声が聞こえた。
可愛い囀りに顔も綻ぶ。

今日も今日とて空の下。
みんなどこかで頑張っている。


『空に向かって』

3/26/2025, 8:16:47 AM

忘れたくないこと。
誰かの優しさ。あの子の薄紅のほっぺ。
可愛いお手手に乗せられた小さな飴玉。

季節の香り。桜の木の下。
桜色のトンネルを見上げて吸い込んだ
甘い懐かしい桜餅のにおい。

朝焼けの空。真っ赤な夕日。
月明かりに照らされた街並みを行きながら
夜の星々に紛れて隠した本音。

大切な思いは残したい。
薄れないように、埋もれないように。
何気ない幸せの瞬間を刻み込みたい。
色褪せないように、ずっと覚えていられるように。

私の頭の中の、記憶の本棚に仕舞い込んである、
古びた日記の一頁にそっと書き記していく。


『記憶』

3/17/2025, 7:25:47 AM

あの人はいつも花の香りがする。
あの人が現れると私は匂いで分かる。
花の香りを辿っていけばあの人がいる。

凛として美しいその立ち姿に、私はいつも一輪の花を想起する。気高く研ぎ澄まされた、それでいて柔らかくあたたかな色味を持つ花を。

あの人が振り返ればその艶やかな長い髪もふわりと円を描き、流動した空気に乗って届く花の香りの濃度がわずかに増す。

その姿を目の前にすれば、漂う香りは私の鼻腔を満たして脳まで届き、肺を通過して全身を巡り始める。

この優しい香りは一体どこから来ているのだろう。
その髪。身に着けているもの。首筋。
もし、この人自身の香りなのだとしたら。

そこまで考えて、私は切り揃えたばかりの前髪をそわそわと触る。
私を呼ぶ声が花の香りと共に届く。あなたは私のことをいつまでも幼い頃の愛称で呼ぶ。
私はもう小さな子どもじゃないのに。

それでもどうしても、その香りに惹き寄せられて、その柔らかい呼び声に顔が綻んで。

私はいま確かに
花の香りに恋をしている。


『花の香りと共に』

3/14/2025, 11:31:27 PM

目には見えないけれどそこに確かに存在するもの。
それ自体に色は持たないけれどそこに在る証拠を確かに持つもの。

風は頬を撫でる。空気は肺を満たす。
きみの心は両の瞳が映し出す。
それは色彩を反射して鮮やかに染まっていく。

見えないものは信じられませんか?
形あるものでなければこの手にすることはできないのでしょうか?


『透明』

3/13/2025, 9:31:50 AM

書く。
思いを、感情を、考えを。
読む。
自分を、他人を、大切な心を。
仕舞う。
そこで見つけた大事な宝物を。
初める。
新たな彩りを得た新しい思考を。

この巡りは、お終いにしたくないなあ。


『終わり、また初まる、』

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