Lacryma

Open App
11/9/2024, 7:25:15 AM

天を仰ぎ手を伸ばす

美しい黄昏に乞うように

あの空に吸い込まれてしまえたら

どんなによかっただろう

壊れ、色を失っていくこの世界で

もう一度、息をすることができたら

私は地に膝をつき懸命に祈った

こんなこと、意味がないことだと知りながら

11/5/2024, 3:16:20 PM

わかっているの

ここに貴方は来ない

私がどれだけ願っても

貴方はあの子を追いかけるって

苦しさは覚悟していたつもりだったけど

それでも、耐えられないものなのね

月が照らす教会で、私は神に祈った

ずっと、貴方を想っていた

私を選んでほしかった

この想いは届かないけれど

せめて、この涙が乾くまで

どうか、私の消えゆく願いを聞いてください

窓から射し込む一筋の光が

優しく微笑む女神の彫像を照らしていた

11/2/2024, 11:04:21 AM

友よ、どうして

一体どうして、こんなことをしたんだ

彼に問いかけるが返事はない

酷いやけどを負っている彼を抱き起こす

私の心はただ焦るばかりで

疑問を投げかけることしかできなかった

辺り一面は火の海だ

自らが燃えようと意に介さず

彼が火を放ち続けた理由は明白だ

捕らわれた私を助けに来てくれたのだろう

だが、私が助かったとて

どうして君を失って、無事であったと言えようか

彼は体温を失っていく

待ってくれ、まだ眠るには早い

でも、あぁ、それでも逝ってしまうのなら

永遠の眠りにつく前に、どうか最期に聞いてくれ

君の友人であれたことは私の誇りだ

ずっと感謝しているよ

11/2/2024, 9:18:43 AM

昔、この王国にはとある物語があった

悪しきを欺き、そして滅ぼした慈愛の女神の伽話だ

その身を堕とし、英雄に自らを貫かせ

人々に誤解を受け、憎まれてなお

光が尽きるその時まで、世界の安寧を祈ったという

随分と杜撰な物語だ

その命を犠牲にこの地を護った女神も

想いとともに彼女を貫いた英雄も

彼らに非情な仕打ちを、虚空の賞賛を送った民衆も

愚かで哀れで虚しくて

誰も救われない物語でしかないのだ

だから、私は真実を語る

彼らの本当の物語が、永遠に語り継がれるように

敬愛なる光の女神の微笑みと

かつて英雄と呼ばれた先祖の涙に誓って

10/29/2024, 6:29:23 PM

女神は狂い世界に絶望をもたらし

悪魔を率いて光さえも奪おうとした

我らが勇者は堕ちた女神の身を貫き

世界は再び安寧を取り戻したという

これは王国に伝わる伝承だ

裏切り者を討ち滅ぼし正義を讃える

実に素晴らしいことだ

未来を護った勇敢な英雄も

さぞかし喜んでいることだろう

だが、私は知っている

誰も知らない、もう一つの物語を

今ここで貴方に話そう

英雄譚の裏に隠された、悲しい伽話を

女神像は泣いている

粉々に砕かれた、悪の女神像は

最期までその手に花を守り

愛と無念を抱き、ただ静かに泣いている

Next