Lacryma

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11/2/2024, 9:18:43 AM

昔、この王国にはとある物語があった

悪しきを欺き、そして滅ぼした慈愛の女神の伽話だ

その身を堕とし、英雄に自らを貫かせ

人々に誤解を受け、憎まれてなお

光が尽きるその時まで、世界の安寧を祈ったという

随分と杜撰な物語だ

その命を犠牲にこの地を護った女神も

想いとともに彼女を貫いた英雄も

彼らに非情な仕打ちを、虚空の賞賛を送った民衆も

愚かで哀れで虚しくて

誰も救われない物語でしかないのだ

だから、私は真実を語る

彼らの本当の物語が、永遠に語り継がれるように

敬愛なる光の女神の微笑みと

かつて英雄と呼ばれた先祖の涙に誓って

10/29/2024, 6:29:23 PM

女神は狂い世界に絶望をもたらし

悪魔を率いて光さえも奪おうとした

我らが勇者は堕ちた女神の身を貫き

世界は再び安寧を取り戻したという

これは王国に伝わる伝承だ

裏切り者を討ち滅ぼし正義を讃える

実に素晴らしいことだ

未来を護った勇敢な英雄も

さぞかし喜んでいることだろう

だが、私は知っている

誰も知らない、もう一つの物語を

今ここで貴方に話そう

英雄譚の裏に隠された、悲しい伽話を

女神像は泣いている

粉々に砕かれた、悪の女神像は

最期までその手に花を守り

愛と無念を抱き、ただ静かに泣いている

10/28/2024, 5:02:15 PM

何も見えず、何も聞こえない

暗がりの中で、ただ静かに目を閉じている

煌々たる光が生む眩しさに

私は恐れ逃げ出し

安寧と静寂を守る闇夜に隠れ

全てが過ぎ去るのを待っていた

ただ息をすることが、酷く苦しかった

しかし、いかに残酷であろうと

人生とはきっと儚く美しい

足元を微光が照らした

この暗がりを抜け

今度は光の下で生きねばならない

刹那の憩いの中で

世界を照らす光の暖かさに

一体どれほど焦がれたことか

全てを隠し安寧をもたらす闇の静穏たるを

一体どれほど望んだことか

10/27/2024, 12:33:17 PM

貴方が好きだった紅茶の香りがする

一体誰がこんな悪質な悪戯をしているの?

今さら思い出させるなんて残酷ね

この香りを辿っていっても

貴方に会えることはないのだから

10/25/2024, 11:16:39 AM

ずっと独りだった。友達になってくれてありがとう

貴女はいつも私に言ってくれた

だから、つい目が眩んでしまった

お姫様を夢見た貴女に、少しでも喜んでほしくて

私は貴族の宝石に手を出してしまった

すぐに兵に見つかり、隙をついて走り出す

ごめんなさい、すぐに返すから

そう思った瞬間、腹部に鋭い痛みが走った

私は射られたのだ

宝石の持ち主は、私のもとに来て言った

卑しい盗人よ、顔を見せなさい

私は彼女の顔を見る

そこにいたのは、私の友達だった

あぁ貴女、私といたのは貴族のお遊びだったのか

言いたいことはたくさんあったが、力が抜けていく

それでも私は、声を絞り出して言った

ごめんなさい、私の、大切な友達

薄れゆく意識の中、最期に見えたのは

私の名前を泣き叫びながら駆け寄ってくる

私のよく知る、友達の姿だった

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