ここまで休まず歩みを進めてきた
その反動か、視界が不安定になり体も重い
私は馬から荷を下ろし
束の間の休息を取ることにした
こんなことをしている暇はないのに
早く貴方を迎えに行かなければならないのに
考えれば考えるほど意識が朦朧として
気づけば東の空から光が射し込んでいた
眠ってしまっていたのか
休んでいる暇ない
闇に攫われた貴方を
救いに行かなければならないのだから
貴方がいつも私を守ってくれたように
今度は私も貴方を助けたい
私は薄れゆく記憶を手繰り寄せ
彼方に向かって再び歩き始めた
貧困に耐えかねた国民は革命軍を形成し
己の仇とばかりに城に攻め入った
私もその一派として参加した
王族を吊し上げるためではない
私は許されざる恋をした
その相手を助けるためにここにいる
しかし、この体はもう使いものにならないだろう
せめて最期に
たった数秒間の悪あがきをしよう
私は喉に力を込めて叫んだ
「ここだ、王女はここにいる!」
大勢の足音が近づいてくる
この嘘はすぐに気づかれ
私の身は正義の刃に貫かれるだろう
それで構わない
彼女は私に生きる理由をくれた
たとえ業火に焼かれようと
私は最期まで幸せだった
ふとした瞬間に貴女との記憶を反芻している
あの時、どうして貴女は綺麗だと
貴女を想っていると言えなかったのだろう
もし何か、たった一言でも何か言えていたら
貴女は今も私の隣にいてくれたのだろうか
もうどうすることもできないのに
貴女は遠くへいってしまったのに
こんなふうに過ぎた日を想っていると知ったら
貴女はいつもみたいに笑ってくれたのだろうか
北に浮かぶ道標と星が紡ぐ物語を話して
夜も星も君の味方だと、貴方は言ってくれた
それなのに、どうして
あの空の光の中に、貴方はいるというの?
そうであれば
見えるのに
そこにいるのに
どうして貴方と話すことも
触れることもできないの?
夜の寂しさを安らぎに変えてくれたのは貴方なのに
どうして私をおいていってしまったの