「燃える葉」(詩)
境内で焚き火してる坊主
般若心経を唱えながら
鋏で燃え盛る葉を寄せたり避けたりしながら
火加減を調整している
坊主の背後から一人の男の姿
「坊主自ら内で焚き火するか?」
「自分の家だし、ちゃんと水も用意してある。
腹ペコにゃ仏も勝てねぇのよ」
般若心経を唱えるのを止め
燃え盛る葉を避けながら葉の中から取り出したのは
アルミホイル包まれた物
軍手を手にはめ、そっとアルミホイルを剥がしていく
剥がされたアルミホイルから顔を出したのは
「焼き芋か」
「ほい。」
坊主は半分程アルミホイルを剥がした焼き芋と
軍手を男に手渡したのだった
「誰か」
迷い込んだ森の中
誰か居ませんか?
誰も居ないと分かっていても
問い掛けるのは
寂しいからかも知れないからだ
相手が誰であれ、
この見知らぬ場所から
離れたい恐怖心から逃れたいから
誰でもいい
「誰か」居ませんか?
「誰か」居ませんか?
迷い込んだ森に響く
ヒトリの
「誰か」
「遠い足音」
廃墟の何処からか足音が聞こえる
一つの足音かと思えば
二つ
三つと増えては消える
此方側に向かっているような
此方側に向かっていないような
遠い足音は
此方側に足を見せることもなく
姿を見せることもなく
一つ
二つ
三つと足音が増えたり減ったりを繰り返している
「秋の訪れ」(一行詩)
朝の戸を開けば冷や風と金木犀の匂いの気配よお入りくださいませ
コロコロ転がる銀杏は一角で秋の夜長会議
「旅は続く」(詩)
この世から消えてしまった絶版(廃盤)/廃刊/廃止となってしまった
書籍/フリーペーパー/新聞/包装紙などの紙類を探す旅は続く
「モノクロ」(詩)
思い出すのはモノクロ時代の記念写真を撮った日だけ
もう貴方様も写真館も無くなってしまったけど
ほんの僅かに記憶の片隅に残ってるわ
「永遠なんて、ないけれど」(一行詩)
何事にも永遠に続いてしまったら?
「涙の理由」(詩)
あの方が決まった時刻に泣くと町の時計台の鐘が鳴る
泣くに合わせて時計台が鳴る理由はあの方の涙の理由ともなる
町で起きた大戦開始時刻に合わせてからだ
「コーヒーが冷めないうちに」(2025/9/27)
君の手は冷たかったから、連れて来た
いきずりの一日だけ関係を持っても君の体は冷たかった
行為をした後に僕は珈琲を飲む癖がある
(コト)
俯いたままの君の目の前にコーヒーを差し出す
牛乳だけのコーヒー
君は少し驚いた表情を見せた
「…どうぞ…コーヒーが冷めないうちに」
「パラレルワールド」
あれもこれも世界中のモノがごちゃ混ぜになって
世界中の人々は驚きを隠せずにも触れることが出来なかった自国外の
外の世界のモノを楽しんでるとか
「時計の針が重なって」
大時計の針を見ながら、時計の針が重なったら、
私たちはバラバラになるわねともう片方の私は云った
針が重なった刻に大時計の鐘は鳴り
私とワタシは消えて三人目のワタシが生まれた
「僕と一緒に」
水の底から声が聞こえる
優しく少ししゃがれた声が聞こえる
白く細長い腕が伸びる
僕と一緒に水の底で…