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11/8/2024, 4:08:46 PM

「意味がないこと」

「後輩。君は意味がないことだなと思うことはあるか?」

先輩は箸でナポリタンをラーメンのように啜って食べていた。

「意味がないこと…ですか?使い道が見当たらないのに専門誌とか買ってしまい、途方にくれてるとかですかね?」

先輩は目を見開き突き刺した卵を口に運ぶ手前で箸を止めた。

「君はあれか?能力者か?今、私がまさにその状態だ。
古本市で輸入本を買ってしまい途方にくれている。
英語の学習と思えば良いのだが…学習になるような本ではなくてな…」

先輩はビニール製の袋から本を出してきた。

「…先輩…職場に持って来ちゃ駄目なやつです…」

先輩に見せられた本は、表紙には半裸になった女性が横たわった姿。
表紙には見出しは全くない。
パラパラ捲っていくとどうやらアダルトちっくな雑誌のようで開いていくと半裸になった女性に全裸の女性に下着姿の女性と…
それから…大人の玩…まぁ…僕の口から云えないけど…。

「なんで…買ったんですか?」

パラパラと捲り閉じた。ここは職場。職場の食堂。
端っこのテーブルとは云え、誰が通って見られるかわからない。

「ふむ。ファッション雑誌か何かだなと思って買ったのだが、
家に帰って開けてみたら、この有り様だ。まさかアダルトな雑誌だと予想外でな、これでは英語の学習には不向きだ。意味がない買い物になるだろうか?」

先輩は箸に突き刺した卵を頬張ってからトマトに箸を運んだ。

僕はアダルトちっくな表紙を改めて見る。
この手の雑誌の好みは人それぞれで内容を見る限り、
載っている女性は全員巨乳でアメリカにアジアに中東の女性だ。
海外の巨乳さん好きな方には、意味がある買い物になるだろうけど…。

ボチャン。トマトがワカメスープに沈む音がした。

「…どうなんでしょうかね…?」

僕は先輩がこの手の本を購入して何の躊躇いもなく職場に持って来て
僕に見せてくるなどの意味こそが知りたい…。

「私には合わない雑誌だ。私が持つのも意味がない。総務課の馳部に見せてくるか。馳部はどうやらあちらさんの巨乳が好みのようだし。気に入るかもしれん」

先輩、なんでそんなこと知っているのだろうか…?
意味のないものに興味がないて思ってましたよ…。

先輩はアダルトっちっくな雑誌をビニール製の袋に戻し
トマトが沈んだままのワカメスープを飲み始めたのだった。

11/7/2024, 10:43:48 PM

「あなたとわたし」

あなたと私は全て似てない
意見だけは似ているよねと
あなたとわたしは嗤う

11/6/2024, 2:27:23 PM

「柔らかい雨」

ほんのり暖かい陽射しが差す中で
降り始めた雨は柔らかい雨となり
狐の嫁入りを祝福する

11/6/2024, 12:30:47 AM

「一筋の光」

「後輩よ。一筋の光に抗ってはならない。」
「あの…先輩…?…なに…突然…?」

先輩は春雨スーブの春雨を啜りながら云う。

「私の家の近くに神社があり、その先にスーパーがあってな、
神社の中を通ってスーパーに行くんだが、その日は、
たまたま本殿に近付いたら、私の顔に一筋の光がかかってな…!」

先輩は割り箸に春雨を絡めたまま話を続ける

「社殿からだぞ?社殿からだ。社殿から一筋の光が放たれたと云うことは神の加護を無下にしてはならぬと云うお告げだと私は思っている。」

それは多分、太陽の光がたまたま先輩の顔に当たっただけで…。

「後輩よ。神の加護を無下にしてはならぬぞ」

先輩の割り箸に絡み付いたままの春雨はスープによって
一筋の光のように光っているように見えた。

11/4/2024, 10:20:18 PM

「哀愁を誘う」

廃駅になったベンチで
誰にも見られることなく
色付いていく紅葉に
漂う哀愁の朝露

錆びたベンチは
雀たちの井戸端会議場になっていた
朝露に濡れていた錆びたベンチは
解体されていく

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