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「意味がないこと」

「後輩。君は意味がないことだなと思うことはあるか?」

先輩は箸でナポリタンをラーメンのように啜って食べていた。

「意味がないこと…ですか?使い道が見当たらないのに専門誌とか買ってしまい、途方にくれてるとかですかね?」

先輩は目を見開き突き刺した卵を口に運ぶ手前で箸を止めた。

「君はあれか?能力者か?今、私がまさにその状態だ。
古本市で輸入本を買ってしまい途方にくれている。
英語の学習と思えば良いのだが…学習になるような本ではなくてな…」

先輩はビニール製の袋から本を出してきた。

「…先輩…職場に持って来ちゃ駄目なやつです…」

先輩に見せられた本は、表紙には半裸になった女性が横たわった姿。
表紙には見出しは全くない。
パラパラ捲っていくとどうやらアダルトちっくな雑誌のようで開いていくと半裸になった女性に全裸の女性に下着姿の女性と…
それから…大人の玩…まぁ…僕の口から云えないけど…。

「なんで…買ったんですか?」

パラパラと捲り閉じた。ここは職場。職場の食堂。
端っこのテーブルとは云え、誰が通って見られるかわからない。

「ふむ。ファッション雑誌か何かだなと思って買ったのだが、
家に帰って開けてみたら、この有り様だ。まさかアダルトな雑誌だと予想外でな、これでは英語の学習には不向きだ。意味がない買い物になるだろうか?」

先輩は箸に突き刺した卵を頬張ってからトマトに箸を運んだ。

僕はアダルトちっくな表紙を改めて見る。
この手の雑誌の好みは人それぞれで内容を見る限り、
載っている女性は全員巨乳でアメリカにアジアに中東の女性だ。
海外の巨乳さん好きな方には、意味がある買い物になるだろうけど…。

ボチャン。トマトがワカメスープに沈む音がした。

「…どうなんでしょうかね…?」

僕は先輩がこの手の本を購入して何の躊躇いもなく職場に持って来て
僕に見せてくるなどの意味こそが知りたい…。

「私には合わない雑誌だ。私が持つのも意味がない。総務課の馳部に見せてくるか。馳部はどうやらあちらさんの巨乳が好みのようだし。気に入るかもしれん」

先輩、なんでそんなこと知っているのだろうか…?
意味のないものに興味がないて思ってましたよ…。

先輩はアダルトっちっくな雑誌をビニール製の袋に戻し
トマトが沈んだままのワカメスープを飲み始めたのだった。

11/8/2024, 4:08:46 PM