「秋晴れ」
秋晴れにぬる燗呑み紅葉姿の地蔵見る
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盂蘭盆に鬼灯の提灯携えて参りかな
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秋晴れのマイクにうねり出す票呼び掛け
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コロッケを頬張る秋祭り
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りんごの唄のりんごはどの子なのか?
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林檎で始まり林檎で終わる一日の締めを
「忘れたくても忘れられない」
「君は忘れたくても忘れられないことはあるか?」
蕎麦を啜り飲み込んだ先輩はまた遠い目をしている
「…先輩はあるんですね…?」
「ある。あれは数年前のことだ。前の仕事場の給湯室で
宇宙人が躍りながらお湯を沸かしていたところを見たんだ」
僕はカレーを掬う途中でスプーンを止めた。
「待って下さい?なんでオフィスビルの給湯室に宇宙人が居るんですか?」
「私に聞かれても私にもわからん。事務作業が長引いて午後1時過ぎぐらいに買ってきたカップラーメンに入れるお湯を沸かしに給湯室に入ったら、宇宙人が躍りながらお湯を沸かしていてな、一瞬何かの部屋と間違えて 給湯室から出たんだ。そもそもその給湯室は扉が無いから誰が居たとしたらすぐにわかるのだ。もう一度そっと見たら、やはり宇宙人が居て躍りながら、お湯が沸くのを待っていたんだ。」
「誰かが宇宙人の姿をして驚かそうとしてたとか?」
「私もそう思ってな、誰なのかと思って、布を引っ張ったんだが…」
先輩は苦虫やクサヤなどのモノを口にしたような表情になる。
「中身がシリコンとコンクリの中間みたいな感触で、人間の肌の感触じゃないんだ」
「シリコンとコンクリの中間?柔くて固い?こんにゃく?」
まるで謎解きのような?シリコンとコンクリの中間て?
「こんにゃくではない。とにかく人間の肌ではない感触があった」
「宇宙人て骨格あるんですよね?アメリカだかで宇宙人だと思われるモノが見付けたてネットニュースでそれらしき遺体の映像がありましたけど」
僕はスマホで該当する記事を検索しその記事を先輩に見せたが、先輩の表情はいつも以上にさっきの表情を更に固くしたような表情に。
「私はお昼をその場に落としたまま所属する部署に戻って、 同僚に一緒に確認して貰おうとしたんたが、給湯室に宇宙人が居るなんて誰も信じないと思い直して、 一度椅子に座って呼吸を整えたんだ」
「水の呼吸ですか?」
僕は呼吸と云う言葉に思わず某アニメの主人公の台詞を思い出してしまった。
「水の呼吸?」
先輩は少しはてなの表情をする。先輩はアニメを見ないので台詞のネタがわからない。
「なんでもないです。それでその後て…」
「その場にラーメンとサラダを落として来たのを取りに。まぁさすがに居ないだろうと。宇宙人が居た給湯室を使うのは気が引くから別の給湯室を使うことにしてラーメンとサラダを拾いに行ったんだ」
僕はごくりと喉を鳴らした。あ、話にではなく、水を飲んで。
「忍び足で給湯室に向かったんだが、落としたままのラーメンとサラダが無くて、もしかして通り掛かった誰かが給湯室に置いたのかと覗き込んだら…」
「覗き込んだら…?」
「宇宙人の野郎、私のラーメンとサラダに手を出していたんだ…!」
先輩は汁を飲み干した器をドン…じゃなくそっと置いた。
「足りなかったんですかね?」
「私のラーメンとサラダを食っていた。私の腹はすでに腹ペコ状態。
空腹状態。また買いに行く時間はもうない。無性に腹立ってな、
宇宙人の首を締めてやったぞ。食い物の怨みは恐ろしいぞと教えてやった」
「待って下さい?(2回目)宇宙人の首を締めたて…。」
僕の頭の中は若干混乱している。宇宙人の首を締めたて…?
先輩は、
「忘れたくても忘れられない」出来事だったと締めたのだった。
「やわらかな光」(一行詩)
洋灯の光頼りに手紙を綴るのは 静けさの嵐
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提灯の灯りに呼ばれて一杯引っ掛けが嫁が鬼になる
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燈曾の灯り 朱朱朱朱の龍が昇りゆく
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蝋燭の灯火に君の表情は能面
「鋭い眼差し」(一行詩)
単に目が悪く皺寄せの寄り目になるので鋭い眼差しではない
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飼い猫の鋭い眼差しの先には丸まったビニール袋
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鋭い眼差しで飼い主を説教する飼い猫は小言魔
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鋭い眼差しで愛の視線をされても怖くて見れない君の眼光
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僕の駄洒落を冷めた鋭い眼差しでつまらないと云う君の眼光
「高く高く」(一行詩)
物価高が高く高く続いて嘆いてる
生活水準とやらはなんですか?
ご飯食べるにはこの値段が高く高く無理だから
高く高く高いランチを選ぶ人とは行動しません
高く高くもう何もかもが嫌になる