安らかな瞳
私の通う小さな教会には魔法が使えるシスターのお姉さんがいる。魔女は危険な存在だからと村のみんなは関わりたがらないけど、小さい頃泣いてた私を魔法で慰めてくれた時から私はお姉さんが大好き。
今日もお菓子や本を持って人っ子1人近寄らない村のはずれの教会へと足を運ぶ。お姉さんは意外と知らないものが多い。聖書の内容とか天使様のこととかはすごく詳しいのに、それ以外のことはあまり知らない。だから私が毎日色々持っていく。お姉さんはいつも興味津々で楽しそうに持ってきたものの話を聞いてくれる。
ある時お姉さんに聞いてみた。
「どうしてそんなに知らないことがたくさんあるの?」
『神様のところでお仕事してるからよ』
天使様みたいに安らかで暖かい目をしてお姉さんは言った。私はずっとシスターってお仕事をしてるって意味だと思ってた。
いつもみたいに軽快な足取りで教会に行った。お姉さんに会えると思うとお父さんに打たれたところも全然痛くなかった。大きな扉をギィと押した時、中から出てきた真っ白な羽が頬を掠めた。鳥でも入ってきたのかとお姉さんの方を見やると、大きくて白鳥みたいに綺麗な翼を背中から広げて、優しく微笑むお姉さんがいた。
『迎えにきたわよ』
お姉さんに手を取られるとふわりと体が軽くなった。
ほらね、魔法が使えるからって危険なわけない。お姉さんの手を握り返して笑った。最期見たのはお姉さんの天使様みたいな暖かい太陽みたいな安らかな瞳だった。
ずっと隣で
俺は悪魔だ。契約してとある人間と共に行動している。こいつに力を貸す代わりにこいつが死んだら魂を頂くのだ。ふん、人間の寿命など悪魔にとっては瞬きする間に終わってしまう。それに加えこいつは十五年ほどしか生きていないにも関わらず常に戦いの場に身を置き続ける生活だ。早死にするのは目に見えている。その間力を貸すなど造作もない。
「さっさと魂をよこせ」
『俺が死んだらって約束だろ』
「これうまいな、もう一つよこせ」
『俺が死んだらもう食えなくなるし、レシピ覚えとけ』
「お前が山ほど作ってから死ねばいい」
『それじゃ腐るぞ』
これが俺たちの日常だった。
むせ返るような鉄の匂い、衣類に染み込む鮮血の赤、苦しそうにうめく声。五感から感じる全てが、こいつはもう直ぐ死ぬと言っている。普段なら手こずるような相手ではなかった。卑怯で愚かな人類どもめ、人質を取るような真似を。くそ、血が止まらない。俺は確かにこいつが死ぬのを望んでいた。だがこいつはこんな最後を迎えていい人間ではない。何か、何か方法は––––––––––––
『そういえば、俺を不老不死にしてよかったのか?』
「不死では無いぞ」
『ほぼ不死みたいなものだろ』
「…まだうまいものの作り方を聞いていなかったしな」
『教えなかったか?』
「そうだったか、まあいい。もうしばらくは俺の隣は貴様でいいと思ったのだ」
『なんだそれ。てかお前が死ぬまで俺も死なないんだからしばらくどころかずっと隣じゃないか』
「…ふん」