夕暮れ、
木造の平屋の中、
生成の土壁と黄緑の畳、
開け離れた障子から光る木漏れ日、
飾りのない壁に映る草木の影、
壁を撫でるように揺れる木陰、
夕風に合わせて弾き合う葉先、
ざわざわとぱちぱちと影から響く音、
私の手をかざしても受け入れる白い木漏れ日、
影に咲く五本指の真っ黒な花、
黄昏時に咲いた私の黒い花は、
緑陰から伸びる夜のとばりに包まれて消えた。
(250507 木漏れ日)
Björkの’All Is Full Of Love’ほど、最高のラヴソングはないでしょう。私はたまに本を抱きしめながら、その至高の愛を聞いています。
(250506 ラブソング)
私、手紙に花びらを入れるのが夢だったので、
あなたのおかげで叶えられました。
そう書かれた手紙を引き出したと共に、封筒から大量の木屑が飛び出してきた。どうやら、削り花の花びらのようだ。彼女の体臭が染み込んだ木の香りがする。桃のような香りがしたので、今度は彼女の白い二の腕を想像しながら嗅いでみた。
(250505 手紙を開くと)
今日一日中、外に出た私は人間の瞳を見たか。
いったい、何人ぶんの瞳とすれ違ったか。
振り返ってみても、そこには虚像しかなかった。
人間がそこにいるという情報しか見ていなかった。
(250504 すれ違う瞳)
青い青い血管が似合うよ、と
私の身体が教えてくれているのに、
青は男の色だの、
女の子だからピンクが似合うだの、
赤や黄色、とにかく青色以外が似合うだのと
周りが色々と言ってくるので、
私は自分の皮膚と肉を引き裂いて血管を取り出した。
手首から引き出してピンと張ってみせた。
私のたましいが流れる青色の血管を見ろ。
(250503 青い青い)