かげろうの如く
ゆらめぎてはためく
つがいの胡蝶の
ワルツかな
(250812 真夏の記憶)
・ た
・ 消 ・ と
・ え 煌 一 ・ え
て び 白 こ 〇 ・
い や き 氷 ぼ 〇 ・
く か 悲 の れ マ ・
に 鳴 粒 て イ ・
は に 伸 ル
聞 閉 び ま
こ じ て で
え 込 干
ず め 上
ら が
れ っ
た て
星 も
屑
の
(250811 こぼれたアイスクリーム)
たかが焼き芋を包む茶紙だろうが、このさつまいもは、龍の鱗から生まれたものであると物語を語られたら、両手のひらで大事に包み返さずにはいられない。物語を香辛料に味わってほしいと祈る語り手のやさしさに、さつまいものとろける甘味が口内にほどけていく。
(250810 やさしさなんて)
百日紅
白き香風ぞ涼しき
白昼夢に
抱かれためり
(250809 風を感じて)
「……——だったら辞める? まーくんがお稽古楽しくないって言うなら、お母さんが迎えにいくの意味が無くなっちゃうじゃない。お母さんだって、こうして仕事終わりに迎えに来ているの。前から忙しいって言ってるのに、まったくもう暇じゃないんだから——……」
彼の灰色の視界が徐々に滲んでいく。母親の自転車に揺られながら、ただ後部座席にもたれた。今座っているのかさえ分からないほどに、現実との感覚がかけ離れていく。もし、母親の愚痴を立ちながら聞いていたら、地面から崩れ落ちていくような錯覚を覚えたかもしれない。母親の話を背中越しで聞いているのに、つい視界を逸らしたくなる。横を向いても、風の切る音と共に、重くのしかかる呪文が片耳から入ってくる。
自転車は未だ家に着かない。血の気のない頬に生ぬるい夏風が当たった。いつもよりも時間の進みが遅く感じる。道路の硬くゴツゴツとした無機質な振動が、彼の濡れた視界をより一層歪ませていく。目を伏せても眠気は来ない。目の前の肉壁からは、母親の匂いが全くしなかった。
(250808 夢じゃない)