明日は明日の風が吹く人生とは言え、
追い風に乗る気は全くなく、
どちらかと言えば、
向かい風に吹かれて歩く時が
自分は生きているんだなと呼吸できる。
(250107 追い風)
ただ本が読みたい。
一緒に本が読みたい。
互いに読みたい本と向き合うだけでいい。
言葉を交わさなくてもいい。
あなたとは背中合わせでいい。
温もりと鼓動とかすかな神経の伝達を
ふたりの脊椎に感じさせればそれでいい。
時折耳元に聞こえるのは、
ページをめくる音、紙と皮膚のひびき、
唾を呑み込む喉元、思わず漏れる溜め息、
乾いた口の咳払い、涙混じりにすする鼻先、
暇つぶしに鳴らす手足の間接、飽きたあくび。
読書に包まれた静穏の中を
あなたと一緒にいたい。
(250106 君と一緒に)
まばゆく暖かな陽光を吸いし白き頬の神々しさ。
柔らかな日陰に包まれし黒きいが栗頭の愛らしさ。
星空に蕩ける蒼黒のつぶらなおめめと、
凍てつく寒さに応える真っ赤なおくち。
私が本を読んでいる時に、子どもがいたずらに寄って来ないかなと願っていたら、そんな子が顔を覗かせて笑ってくれました。きっと、冬晴れの陽気をまとったお地蔵さんの生まれ変わりでしょう。
私はまだ大人になれぬ子どもですから、手を合わせて挨拶もせず、つい笑ってお別れをしました。
暖冬のぬるさに、お天道さまのありがたみが薄らいでしようもありませんね。
(250105 冬晴れ)
偶然見下ろした先にある道端の苔に咲く、米粒ほどの小さな花に美しさを感じること。
この美を日々愛せば、いつかは袁枚の見た牡丹が苔の中にも咲くだろうよ。
(250104 幸せとは)
日の出は見えるだろうか。
地平線から顔を出す太陽をこの目で見たことがない。
そのお顔はみな建物の群れに隠されてしまう。
海まで行けば見えるだろうが、
道路やら防波堤やらとにかく高い塀と幅広い道で
海まで辿り着く道のりがあまりにも長い。
日の出は見えるだろうか。
太陽そのものより光が見たい。
陽光に照る光の波を触りたい。
波間に揺れる泡を身体に浴びたい。
泡沫になったたましいを授かりたい。
数多のたましい輝く太陽と出会いたい。
日の出は昇っただろうか。
(250104 日の出)