『記憶の海』
ぽちゃんと落としたいつかの記憶。
嫌な、嫌な、吐き気がする記憶。
いつの間にかそれは海底に蓄積し、
灰色の砂浜に立つ僕の喉元にまで追いついた。
鋭い、鋭い、重い鉛の様だ。
時が止まった激しい波にも見える。
あと1つ、記憶を落としてしまえば
僕の喉元を貫いて、全身に鈍い色の毒が巡るだろう。
僕はここから動けない。
僕はここから動かない。
落とし続ける、今日も明日も。
忘れ続ける、今日も昨日も。
あなたはこんな僕を見てどう思う?
哀れだと思う?
可哀想だと思う?
嘲笑う?
それとも、あなたと僕を重ねますか?
僕のこの海は酷く濁った色をしています。
嫌な記憶を葬り続けたので。
あなたの記憶の海はどんな色をしていますか?
あなたの記憶の海はどんな意味を持ちますか?
…面倒なものですね。
記憶の海に消し去ったつもりなのに、何故この鉛は僕の喉元まで届いているのでしょう。
ふふ、でも僕はここから動けません。
ずっとこの海に囚われて、死が来る時を待つのです。
本当は動けるんですけどね、僕の所有者が気づいたら。
心を無理に押し殺すと、僕の様になりますよ。
まぁ、僕が死んだとて所有者が死ぬとは限りませんが。
体より先に精神が死ぬか、
精神より先に体が死ぬか。
どちらにしても死のみですね。
では、僕はそろそろおいとまします。
大丈夫ですよ。僕が死んでも所有者は死にません。
必要な、犠牲なんです。
ぽちゃん。
追いやられた孤独な精神、彼方の海に沈んでいった。
そしていつか気づいたら、記憶の海は枯れ果て、砂漠となった。
この砂漠が潤うことはあるのか。
今日もそんなことを思いながら変わりようのない日々を過ごす。
嫌な記憶を砂漠の底に埋めながら。
また、今日も。
『感熱』
あの子の目からこぼれ落ちる涙は燃えていた
朝、いつも通りに教室に着くと隣のあの子が泣いていた
ふっーふっーと興奮する気持ちを抑えるみたいに、必死に必死に堪える目の縁からぽとんと涙がこぼれ落ちる
また先生に怒られちゃったんだってね
後ろを振り返り、1つ前の席の子が言う
でもその子ができないのが悪いよね
あの子を蔑んだ目で見ながら、1つ後ろの席の子が言う
でもその子なりに頑張ってるんだよ?
あの子を庇うように、1つ右隣の席の子が言う
僕は何も言わず、ただただ困惑しあの子を見つめる
あの子は鼻をずびっとすすりながら
泣いてないもん
と強がった
赤く腫れた目が、こちらをキッとキツく睨んだ
潤んだ瞳で、赤く腫れた情熱の目で
瞬間
ぶわわと僕の目から涙が溢れる
溢れた涙は
熱くなった頬を伝って冷ややかな地面に跳ね返る
あぁ、あの子の情熱に噛みつかれてしまった。
喉元を刺されたように冷ややかな熱さが全身を覆う
熱い熱い熱い
熱い熱い熱い熱い
熱い熱い熱い熱い熱い
熱い熱い熱い熱い熱い熱い
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い
あつい。
お題『静かな情熱』
※感熱=熱によって化学反応を起こして変色する性質
お久しぶりです!織川です。
あぁ…もう来年は受験生ですよ…早いですね時が経つのって…織川美大受験するんですけど、もうマジ絵下手すぎて笑えないです。その分他の人よりも頑張って時間かけてはいますけど…まぁ明日もまた頑張って書いてきますよ。今回の石膏デッサン、ゲタなんですけどあいつ…!顎の形が一生直らん…!!!体書くのは好きなので体の方はまだマシなんですけどなにせ顔が苦手なもんですから…首像よりはいいんですけどね…いやでも服かくの楽しいです!でもまだ2時間書き出しで下書きの状態なんですけどもう…!全然直らん…!今週土曜は部活ないので土曜書こうか迷います…明日4時間やる予定なので順調に進んで気がのったら土曜も行ってきます。土曜で一旦完成させてまた月曜から崩してまた完成させようかな〜って思いますね。とにかく納得するまで描き続けます。せめて粘り強さでは負けたくないです。
君と一緒の道を歩く
君と一緒の空を見る
君と一緒の季を巡る
君と一緒の地へ潜る
君と一緒に地獄に落ちる
『少年Bのハンコウ』
少年Bは、人を殺した。
それはそれは激しい雨が降る夜に。
少年Bに滴るのは、ただただ興奮して火照った体を強制的に冷却する雨だけである。
涙など流れてこない。あったとしてもそれは涙ではなく、人を殺したことによる焦燥感ゆえの汗であろう。
少年Bは、前々からこの人物を殺すつもりであった。
一時の昂った感情などのものでなく。
計画的な犯行、反抗、反攻であったのだ。
だがこの少年Bは人を殺したことを悪い事だとは思っていない。いや、正確に言うとするならば「この人物を」殺したことについて悪い事だとは思っていない。だろうか。
多分、他の人を殺したであれば大罪を犯してしまったとさぞ恐怖で震えるだろう。
しかし、少年Bが殺したのは他でもない少年Aである。
いつも、いつも、いつも先にいる、少年Aである。
さぞ妬ましいだろう。
さぞおぞましいだろう。
さぞ愛らしいだろう。
どう自分をアピールしたところで結局皆少年Aの方へと流れてゆくのだ。
そこで少年Bは考えた。
「自分が少年Aを殺せば、皆自分に注目してくれるのではないか」
あぁ、なんと賢い。賢く醜く愚かな考えだ。
しかし、僕は止めはしない。
少年Bの傘になることなど到底僕にはできぬのだ。
いいや、先の言葉は撤回しよう。
僕は少年Bの傘になどなりたくないのだ。
きっと少年Bの傘になると、激しい雨で破れてしまう。
他人のために犠牲になるなんざ僕はまっぴらごめんである。
気づけば雨はしとしと、と柔らかくなっている。
少年Bの手元にある包丁は大雨で血の色が失せていた。
少年Bは、ただただ空をぼんやりとした眼で見つめている
魂でも抜けたような表情である。
顔に降り注ぐ柔らかな雨は、きっと少年Bを赦してくれる唯一の友なのであろう。
あぁ、可哀想だ。少年Cの僕よりも哀れだ。
上ばかり見すぎたせいで下が見えなくなってしまったのだ。
人殺しよりも人を見下す方が軽い罪であるというのに。
見下せばよいのに。
貶してしまえばよいのに。
愚か、疎か、おろかである。
さて、そろそろ僕はこの話を締めるとしよう。
少年Cとしての役目を果たしたからな。
あぁ、そうそう最後にこの話の本当の題名を教えてあげるよ。
『少年Cの愚かなプライド』
お題『柔らかい雨』
少々お題から大それましたね…すみません…
『ヒペリカム』
先日、幼ななじみが亡くなったんです。
たった、15歳で亡くなったんです。
私、泣いたんです。
一日だけ。
他の友達も泣いたんです。
1週間も。
少し、疑問を抱いたんです。
私は幼なじみで深い仲なのに何故他の友達よりも私の方が泣いていないんだろうって。
私、薄情者なのでしょうか。
いやでもきっと、これは薄情ではないはずです。
それにあの子も望んでいないはずです。あの子に執着して引きずり続ける私を見たくはないと思うんです。
行かないでなんて言えません。
行かないでなんて自己中です。
だから、笑ってありがとうって言うんです。
ただただ、大粒の涙がこぼれないように、あの子のいる空を向きながら。
悲しみは、続きませんから。
一度悲しみは断ち切らないと。
だから、薄情者と言われても。
私はあなたを想って泣くことはもうしません。
幼なじみ、ですから。
ともだち、ですから。
貴方の知り合いでありますから。
来世ではまた顔見知りとして0.1から始めましょう。
※このお話は現在の人物とは関係ありません。
だって、もうあの子は他の子ですもの。
本音言えたのであればせめてまたねと言いたかった。
せめて話をしたかった。
せめて愛してると伝えたかった。
助けてあげたかった。
行かないでなんて言えるわけがない。
苦しそうなあの子の眼差しを見て、行かないでなんて。
そんな、残忍なこと。
あの子の幸福をただただ願いたい。
あの子の幸福をただ、ただ。
諸事情でお花も供えられないのでせめてこの話の題名としてあの子を追悼します。
ヒペリカム
悲しみは続かない。
続かせませんよ。私が生きているかぎり。