#寒さが身に染みて
おめでとう。
貴方が私達の元に来てくれてから
もう20年も経ったのね。
昔はよく私の服の袖を引っ張っては
駄々を捏ねていたのに。
今では立派に育ってくれて
喜ばしいことなのに少し寂しいのは何故かしら。
これから先、きっと嬉しいことも辛いことも
沢山あると思う。
でもこれだけは忘れないで。
私達はいつでも貴方の味方だから。
無理はしないで。
たまには顔を見せてよね。
大切な人が出来たら紹介してほしいな。
なんて言ったら気が早いと言われちゃうかしら。
成長した貴方を見ると
私も歳を取ったなって感じるのよ。
長ったらしいのは嫌いよね、ごめんなさい。
でも最後にこれだけは言わせて。
私達を選んでくれて
ありがとう。
#20歳
気晴らしに窓辺で勉強していると
冷たい夜風と祭囃子の音が流れ込んできた。
集中力が途切れてしまった私は
視線を手元から窓の外へやる。
するとそこには輝く月がいた。
今夜は三日月のようだ。
半分以上欠けているのに
何故変わらず眩しいのだろう。
あの月も再び満ちてやがて満月となる。
私のこの努力もいつか実を結び
満ちるときが訪れるのだろうか。
そんなことを考えながら私は再びノートへ
視線を戻す。
受験勉強もラストスパート。
月のようになれなくても構わない。
今はただ期待を胸に抱きながら
出来る限りのことをしよう。
#三日月
私の世界はたくさんの色で溢れてる。
鮮やかな色から柔らかい色。
幸せな時は暖色に染まり、
沈んだ時は寒色に染まる。
好きなあの人と目が合うとパッと色が付く。
それは何色にも表現できないけれど、
私はその色が好き。
あの人にはどんな世界が見えてるのかな。
彼から見た私は何色かな。
そんなことを考えていると
目の前に桃色の花弁が舞っていた。
もうそんな季節。
今日も私は"色"を見ている。
#いろとりどり
ふわふわと空から舞う白。
それを見て目を輝かせながら地団駄を踏む。
あの子は寒がりだから炬燵に潜って出てこない
けれど、
ボクはお外に出てあの白いふわふわに触れてみたい。
窓に向かって大きな声で騒いでいると、
大好きな女の子が様子を見にやってきた。
そして駆け回るボクを抱きしめて
「元気だね〜折角だしお散歩行こっか」
と優しく尋ねる。
やった!っと嬉しさを身体で表現していると
女の子は炬燵の中のあの子をチラリと見る。
「こまちは〜…行かない?」
にゃぁぁ…
あの子は眠たげな声を出し、女の子の問いかけに答えながらスヤスヤと眠りについた。
出来れば一緒に行きたかったけれど…。
「じゃあ、今日はお庭で遊ぼうか」
再び女の子はボクの顔を見る。
そして困り笑顔で囁いた。
本当は公園に行ってたくさん走り回りたかったけれど、あの子が寝ちゃったならしょうがない。
今度は絶対3人でお散歩するんだ!
そう心の中で強く思いながら
ボクは大きな声で返事をする。
『わん!!!』
#雪