彩竜帝 里乃亜

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5/1/2023, 11:13:24 AM

 昔々あるところに白と黒だけの国がありました。
 そこには多くの人々が住んでいました。
 ある日、その国に住んでいる少年が歴史書を見つけました。
 それを見てみれば、そこには「色」の存在が記されていました。
 少年は首をかしげました。
 「この世には白と黒以外にも色というものがあるのか」
 そう疑問におもいました。
 しかし、その歴史書の話を誰に話しても信じてもらえませんでした。


 そうして、幾年か経ちました。
 少年はまだその「色」の存在を信じておりました。
 周りの人々はそんな少年を軽蔑し、冷たい目で見ておりました。
 しかし、人には我慢の限界というものがあるものです。
 少年は軽蔑され続け、ついに"堪忍袋の緒がキレてしまいました"
 そしてその少年は初めて「人を殺してしまったのです。」
 始めにてにかけたのは"りょうしん"でした。
 りょうしんの体からは鮮やかな「赤色」が飛び出しました。
 少年は考えました。他の人の体からは違う「色」が飛び出すのではないかと。
 "せんせい"の体からは深い「緑色」が出てきました。
 "ともだち"の体からは淡い「黄色」が出てきました。
 "いとこ"の体からは真っ直ぐな「青色」が出てきたのです。
 少年はもっともっと、全人類をてにかけました。
 それぞれの人からそれぞれ違う「色」が飛び出しました。
 少年はその「色」を使ってこの国を自分だけの色に染め上げたのでした。
 少年はこの「色」を他の人々に自慢しようと人を探しました。
 しかし、人々はもういません。
 愛した人々ももういません。
 少年がてにかけてしまったからです。

 少年は泣きました。
 ずっと、ずっと、ずっと...
 泣いてないて、前が見えなくなるほど、涙が出てこなくなるまで泣きました。
 少年が顔をあげるとそこにはいつしか見た何もない国が広がっていました。
 その前には黒いローブを羽織ったニンゲンが居ました。
 そのニンゲンはこう言いました。
 「お前はここの人間を殺した。罰として不老不死の力を授ける。」
 そう言い残し、少年が集めた「色」を持ってどこかに消えてしまいました。
 それからその国の行方は誰も知りません。
 その少年の行方も分かりません。
 しかし、何処かで必ず生きているのでしょう。
 「色」を求めて、
 失った大切な人々を求めて...

                 「カラフル」

                                 作者 じゃぱまう

5/1/2023, 9:26:58 AM

お題「楽園」

「楽園ってなんだろうね?」
全ての始まりは、彼が発したその一言からだった。

それは彼とその友達がお菓子をつまみなかがらそんなことを話していた。始めはただの雑談だったのだが、彼が何を思ったのかふとそんなことを口にした。
「え?」
彼の意味深な言葉に首をかしげるその友達。いつもだったら絶対に止めるはずのないチョコ菓子をつまむ手を止めて彼の方を見つめる。ガラス細工のような空色とレモン色の瞳を見つめ返す彼。そんな彼から目をそらし一つため息を付いてから友達は再び話し始める。
「やっぱり人それぞれなんじゃない?天国を楽園を捉える人、この世を楽園と捉える人とかさ、見方が違えば意見だって違うでしょ?」
そう言ってソーダに口をつける彼の友達。星空のようなソーダの中に浮かぶ氷。その氷に反射して映る自分を少し見つめてから彼に視線を送り、彼女はこう聞いた。
「あんたは?あんたはどうなの?」
彼は少し窓の外の景色に視線を移す。外では小鳥達がさえずり、子ども達がキャッチボールをして遊んでいる。
それから、少し悩んでからこう答えた。
「ん~、分かんない。」
「そう。」
短いやり取りだったが、彼らにはそれで十分だった。
夏の夕方の日差しが彼らを優しく包み込んだ。
そしてゆっくり、のんびり、日は沈んでいった。