緋夜莉

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4/17/2024, 12:29:26 PM

少し前までは、桜が満開だったのにな。
そう思いながら、二人で歩いた道を今は一人で歩く。

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「桜のこと、空に知られぬ雪って言うらしいよ」
彼女に言われて、桜を見上げる。
「確かに雪に見えなくもないよね〜」
「そうだね」
「あ、じゃあ、またね」
「うん」
彼女とは、この交差点で別れていた。
そして、僕は彼女の後ろ姿を見送ってから帰っていた。
しかし、あの日は違った。
彼女と別れて、すぐに帰り路の方向を向いた。
キキーッ
後ろで急ブレーキを切るような音と、何かがぶつかる音がする。
振り向くと、車が彼女にぶつかっていた。
ピンクと赤が彼女を包んだ。

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あの日から、僕は独りだ。
彼女以外に恋人を作るつもりはない。

…桜が散る中に、彼女が見えた。

4/15/2024, 1:34:30 PM

「じゃあね~」
「うん、じゃあね~」
手を降ってから、後悔が押し寄せる。
また今日も、伝えられなかった。
どうでもいいような、くだらない話はいくらでもできるのに。
この二文字だけがどうしても喉に突っかかる。
おまけに、私はツンデレ。
いつになったら、あの子に想いを伝えられるのだろうか。
もう想いを寄せて、3年も経つのに。

4/14/2024, 1:26:39 PM

神様へ

神様が本当にいて、人間を見ているのなら。
私の、この願いを聞いてください。

あの人の人生を奪わないで。
あの人は、他とは違う。
本当に優しい人なんです。
私の声にも気づいてくれた。私に自信を与えてくれた。
あの日、私は大好きな姉を亡くしました。
あの声を、姿を、性格を、匂いを、思い出を。
忘れるくらいなら、私が姉を生きようとしていた。自分を殺して、姉を生きようとしていた。
それをあの人が…彼が、止めてくれた。
彼は、もうすぐ死ぬ運命にあります。
神様、私はどうなっても構いません。
彼を、助けてください。

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「あ、彩葉」
「…匠海さん」
「…彩葉、お前、俺が死なないよう、神様に願ってくれたんだな」
「え…」
「神様に教えてもらった」
「そ、そうなんですか…」
「…ありがとう」
「う…」
「じゃ、もう会わないわ」
「え…?」
「お前を止めたのは、俺の命を助けてもらうため。あと、お前は透香には似ても似つかないから。助けてもらった今、お前はもう必要ない」

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神様へ

あの人を懲らしめてください。
私を利用したあの人を。苦しめてください。
私の怒りは到底収まらないです。

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「きゃあああっ、看板が落ちてくる…!!」
ドサッ
「男の子が下にいるぞ!」
「いやあっ、匠海くん!」
…ありがとうございます、神様。
神様はやっぱりいました。

4/9/2024, 1:07:05 PM

誰よりも、ずっとあなたを見てきた。
誰より早く、あなたに恋をしていたのに。

あなたが選んだのは、可愛いお金持ちの子。
結局、あなたも顔しか見てないのね。

あなたを愛した時間はどうしたらいいの?
あなたを愛してきた私の気持ちを無視するの?

あなたの瞳の中に、私はいなかったんだ。
私、見たよ。あの子が他の男と遊んでるの。
それでも、あなたはあの子を選ぶの?
私はあなたを一途に愛する自信があるよ。

…ああ、そう。わかったよ。
私の愛はあなたには重かったの。そう。
仕方ないこと。あなたは悪くないよ。
そう。あなたは悪くない。誰も悪くない。
だから、だから───…!!

「おい、愛衣…!!」
目の前には愛する彼がいる。
彼は真っ直ぐ私を見てくれる。
もう誰かに盗られることもない。
赤い服を身にまとった彼は、虚ろな目で私を見る。
ああ、私の思い描いた生活だ…。
「愛してるよ」

4/8/2024, 11:30:08 AM

これからも、ずっと。
なんて、窓の外の桜を見ながら考える。
桜を見ると、別れを感じる。
始まりがあるなら、終わりもあって。
この綺麗に咲き誇った桜も、永遠ではなくて。この世に生まれてきたのなら、この世で死んでしまって。
永遠なんてもの、この世には存在しないのだろう。
いつか、見知らぬ人との出会いがあって。
いつか、あなたとの別れがあって。
嗚呼、神様、一つだけ。
私とあの人の間に、別れを作らないで。
───なんて、こんなちっぽけな願いも聞いてくれないのでしょうね。
神様、あなたは残酷だ。

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