緋夜莉

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神様へ

神様が本当にいて、人間を見ているのなら。
私の、この願いを聞いてください。

あの人の人生を奪わないで。
あの人は、他とは違う。
本当に優しい人なんです。
私の声にも気づいてくれた。私に自信を与えてくれた。
あの日、私は大好きな姉を亡くしました。
あの声を、姿を、性格を、匂いを、思い出を。
忘れるくらいなら、私が姉を生きようとしていた。自分を殺して、姉を生きようとしていた。
それをあの人が…彼が、止めてくれた。
彼は、もうすぐ死ぬ運命にあります。
神様、私はどうなっても構いません。
彼を、助けてください。

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「あ、彩葉」
「…匠海さん」
「…彩葉、お前、俺が死なないよう、神様に願ってくれたんだな」
「え…」
「神様に教えてもらった」
「そ、そうなんですか…」
「…ありがとう」
「う…」
「じゃ、もう会わないわ」
「え…?」
「お前を止めたのは、俺の命を助けてもらうため。あと、お前は透香には似ても似つかないから。助けてもらった今、お前はもう必要ない」

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神様へ

あの人を懲らしめてください。
私を利用したあの人を。苦しめてください。
私の怒りは到底収まらないです。

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「きゃあああっ、看板が落ちてくる…!!」
ドサッ
「男の子が下にいるぞ!」
「いやあっ、匠海くん!」
…ありがとうございます、神様。
神様はやっぱりいました。

4/14/2024, 1:26:39 PM