映乃 葵

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10/28/2023, 8:26:18 AM

紅茶の香りが自分の鼻をくすぐった。
自分は、この香りが嫌いだ。大嫌いな両親が、これを飲んでいたから。
きっと、両親は紅茶自体が好きなのではなく、そこに隠して入れた薬が好きなのだろう。
何故隠したか?そんなのは知らない。知りたくもない話だから。
「ねぇ先生。アンタもこの紅茶好きなんですか?」
気になったから問いてみる。彼はこう言った。

「いいや、大嫌いだ」と。


「薬が、無いからね」

大嫌いな両親が好きでいれる時間は、先生でいてくれる時間だけだった。


一言だけ言っておく。自分は、紅茶は好きだ。
薬なんて、入れないから。

10/23/2023, 11:50:08 AM

冷たい風が、急かすように私の背中を押す。
そんな急かさなくたって、すぐ行くよー。とひとりごち、一歩足を踏み出す。
下を見ると、そこには蟻のようにうじゃうじゃと歩く人々。
私は今、12階建てのビルの屋上にいる。自殺をするために。
こんな人生おさらばっ!とわざと明るく放ち、スキップをした。
着地点は無いのに。



どこまでも続く青い空が暗転し、闇色の空となった。

10/21/2023, 10:33:24 PM

生きる価値は自分には無いと、世間から言われ続けた。
『お前みたいな腰抜け、こんな世界にいらない』…『お前の親も可哀想だよ、こんな腰抜けを社会に出して』…。
一体僕が何をしたと言うんでしょう?
ただ、好きなことを追い続けただけなのに。それだけで、社会から逃げていると思われたのでしょうか。
それなら、ずっと社会から逃げ続けて、好きなこと─歌を歌い続けてやる。

声が、枯れるまで。