映乃 葵

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紅茶の香りが自分の鼻をくすぐった。
自分は、この香りが嫌いだ。大嫌いな両親が、これを飲んでいたから。
きっと、両親は紅茶自体が好きなのではなく、そこに隠して入れた薬が好きなのだろう。
何故隠したか?そんなのは知らない。知りたくもない話だから。
「ねぇ先生。アンタもこの紅茶好きなんですか?」
気になったから問いてみる。彼はこう言った。

「いいや、大嫌いだ」と。


「薬が、無いからね」

大嫌いな両親が好きでいれる時間は、先生でいてくれる時間だけだった。


一言だけ言っておく。自分は、紅茶は好きだ。
薬なんて、入れないから。

10/28/2023, 8:26:18 AM