あなたとわたしは全く似てない。
あなたは和食が好きだけど、わたしは洋食が好き。
あなたは猫が好きだけど、わたしは犬が好き。
あなたの周りには沢山の人がいるけど、わたしの周りには数人の友人だけがいる。
あなたは嘘をついて無理するのが上手だけど、わたしはいつもあなたに嘘がバレてしまう。
あなたはわたしを大切だと言うけれど、わたしからすればあなたの方が大切。
あなたとわたしは全く似てない。
だけど唯一同じところは苗字だったりする。
パッと夢の中で目が覚めた。
自分が誰なのかさえもわからない暗闇の中、夢の中だということだけわかった。
手はついてる、足はある。
ほっぺはつねっても痛くない。
そうやって体を端から確認していると、いきなり一筋の光が現れた。
自分のとこからは少し遠く。
光をスポットライトのように浴びた、真っ白なドアが見えた。
そのドアを見た瞬間、吸い寄せられるようにふらっと立ち上がる。
当分歩いてなかったのだろうか、やけに歩きづらい。
少し遠くに見えたはずのドアがはるか彼方にあるように感じる。
ドアに近づいた頃には、足は動きたがらず、息は過呼吸になるんじゃないかという程にあがっていた。
早く座り込んでしまいたい。
心が折れる寸前、やっとドアノブに手が届いた。
最後の力を振り絞り体重を使ってドアを開ける。
そこで意識が途切れた。
パッと目が覚めた。
こんどは夢じゃない。
自分のことも、周りの人達が家族なのもわかる。
キョロキョロと周りを見回すと、母が目に涙をためた。
見覚えの無い天井。
体に繋がっているだろうたくさんの管。
あぁ、私は助かってしまったのか。
息を吸って、吐いて。
窓の隙間から潜り込んだ風が、鏡を見るように私を促す。
鏡の中の私はいつも表情だけ合わなかった。
怒っているのに、煽るようにニヤニヤ笑っていた時。
悲しんで涙を流しているのに、嫌なものを見るような目で見られたこともあった。
でも今日の鏡は素直みたいだ。
私の幸せそうな笑顔を綺麗にそのまま映している。
あぁそうか、今までの鏡もきっと素直だったんだ。
1回も偽物なんて映してなかった。
幸せは自ら否定しないものだから、こんなにいい気分なんだろうか。
そんな事を思っていると扉がノックされた。
別の風が同じとこから潜り込んできて、私の背中を押す。
今世界で1番の幸せものはきっと私だ。
白いドレスに身を包んだ私を、鏡の私は嬉しそうに見ていた。