息を吸って、吐いて。
窓の隙間から潜り込んだ風が、鏡を見るように私を促す。
鏡の中の私はいつも表情だけ合わなかった。
怒っているのに、煽るようにニヤニヤ笑っていた時。
悲しんで涙を流しているのに、嫌なものを見るような目で見られたこともあった。
でも今日の鏡は素直みたいだ。
私の幸せそうな笑顔を綺麗にそのまま映している。
あぁそうか、今までの鏡もきっと素直だったんだ。
1回も偽物なんて映してなかった。
幸せは自ら否定しないものだから、こんなにいい気分なんだろうか。
そんな事を思っていると扉がノックされた。
別の風が同じとこから潜り込んできて、私の背中を押す。
今世界で1番の幸せものはきっと私だ。
白いドレスに身を包んだ私を、鏡の私は嬉しそうに見ていた。
11/4/2022, 7:07:00 AM