モコモコしたダウンコート
レギンスの上からコーデュロイのズボンを重ね着して
フワフワした履き心地のスノーブーツ
首元にはピンクの毛糸のマフラー
ミトンの手ぶくろも同じピンク色
そして新たに耳元までカバーされる
白いポンポンが頭頂部と左右に垂れ下がった
ピンクのニット帽が仲間入り
「雪だぁ!」
一面真っ白の世界で眩しいのは
降り積もった雪か はしゃぐ我が子か
『帽子かぶって』
あのすみません
その声で後ろを振り返る
自分よりも随分年下な女の子がいた
清潔感のある制服姿で
肩から下げたスクールバッグの肩紐を握りしめ
顔を真っ赤にして自分を見ている
街中のこのシチュエーション
何もない
何も起こらないと言い聞かせながら
自分の心臓が跳ね上がる
はい
唾を飲み込み返事をした
目が合えば女の子が肩で息を吸った
ズボンのお尻が割れてます
女の子はこちらに一礼をして
パタパタと走り去っていった
自分は手にした通勤カバンを
気持ち後ろ気味に持ち直して
駅のトイレまで早歩きした
『小さな勇気』
「わぁ!」
驚いたり、戸惑ったり、笑えたり。
相手の反応が面白くてついつい繰り返してしまう。
声を掛ける前、今回はどんな反応するんだろうと、ワクワクドキドキするのだ。
あ、今日はまだやったことない友達にやってみよう。
フリフリした洋服を身に纏う友達はとても可憐な女の子だ。きっと可愛い反応に違いない。
背後からそろり、そろりと近づいて。
「わぁ!」
「ぎゃーー!! ビックリするじゃねぇか何しやがるんだこの野郎ぶっ飛ばすぞゴラァ!!」
容姿とは相反する男勝りな口調と、その気迫に思わず腰を抜かした。
『終わらない物語』『わぁ!』
目を瞑った君の唇に触れる
柔らかくて瑞々しい唇は肌に吸い付く
数秒待って離れると君の目が開く
至近距離で目が合えば君は恥ずかしそうに笑う
僕は目を細めて見つめる
君にキスをする日は二度とこないだろう
『瞳を閉じて』『やさしい嘘』
私の指針は常にブレブレ
定まりそうで定まらない
ついには諦めてグルグル
思考の迷路から抜け出せない
『羅針盤』