「ここから反撃開始だ」
『これまでずっと』
【お疲れ様です。……】
仕事を忘れて過ごしていたはずなのに、これだよ。しかも私だけ休みの日に限って仕事のライングループが稼働する。
パキパキとメッセージが続けて届く。中途半端なタイミングで既読や返信をするのは、話を折ってしまう気がしてタップできない。
いや、本当は家にいてまで仕事したくないだけである。
通知が鳴らなくなったスマホのホーム画面を見つめる。メッセージがいくつか重なっているらしい。仕事のラインだ、本当はすぐに返信しなきゃいけない。
頭では分かっているけど、休日の私は抵抗したい。もう少し、仕事を忘れて過ごしたい。でも内容が気になるのも事実。もしかしたら私がやらかしたかもしれないから。
私は震える指でそっとメッセージを長押しした。ホーム画面上でメッセージの全容が浮かび上がる。内容は引き継ぎ事項で、すぐに返信が必要ではなさそうだ。
私はホッとして画面から指を離した。既読はまだついていない。もう少しだけ、動画見よう。
『1件のLINE』
「さっむ! いっだぁ!!」
情けない声を発しながら目が覚める。二の腕を手のひらでさすっただけなのに、私の左ふくらはぎはピンと張り詰めた。急な痛みに襲われて、私は左足を抱えてのたうち回る。足首を動かして、そっと伸ばしたり縮めたりを繰り返した。また足を攣らないように、慎重にだ。
次第に痛みが和らいだら、足元でくしゃくしゃに丸まったタオルケットを首まで被る。私はどうやら寝ている間は暴れているらしく、寝るまでかけたものが朝には全て剥がれているのだ。そのため、夏は冷房で、冬は暖房を切ったがために体が冷えきっている。ほぼ毎朝、身震いで起きるのだ。
冷えきった体にかけたタオルケットは温かい。たった一枚、布切れを被るだけでこれほど温かいのかと驚いてしまう。
心地良い温もりに包まれて、ウトウトしていると急に時間が気になった。枕元に置いてあるスマホをつければ、時刻は四時すぎを表示させていた。
アラームが鳴るまで一時間。まだまだゆっくり寝られる。
私は安心して目を閉じ、意識を飛ばした。
一時間後、アラームの音に驚いてまた足を攣り、のたうち回りながらタオルケットの行方を探る羽目になるのだが、もはや夏の風物詩と思いたい。
『目が覚めると』
「当たり前」
胸を張って堂々と言えるくらいまで
努力し続けた自分を時々労ってあげてくださいね。
『私の当たり前』
疲れ果ててヘトヘトの状態で、
出汁やスパイスの香りに誘われたら、
そりゃ、その明かりに吸い込まれるでしょ。
『街の明かり』