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5/3/2024, 12:59:14 AM



 瞼の奥が眩しくて、目を開いた。
 寝る前と同じ、シミひとつないホテルの天井だ。てっきり朝になったのかと思ったが、カーテンの隙間から光が滲んでなかった。
 代わりに、サイドテーブルに置かれたライトがついていた。オレンジ色に優しく点るはずのそれは、ベッドで寝転がる私の角度的にカバーが間に合ってなかった。
 とにかく眩しいライトを避けようと、モゾモゾ動いていたらすぐそばで笑い声が聞こえてきた。目線を動かすと、彼がベッドの端に腰をかけていた。
「起きた?」
 彼は手にしていたペットボトルを渡してきた。受け取った私は気怠い体を起こして、キャップが開いたままのそれを口に含んだ。無色透明の何の味もしない水が乾いた体を潤してくれてる。じんわりと染み渡るのを感じた。
 半分以上残ったペットボトルを彼に返すと、キャップを閉めてサイドテーブルに置いていた。そしてそばに置いてあった煙草を取り、一本取り出した。
「まだ寝ててよかったのに」
 そう言って口に煙草を咥える彼に、首を振りながらライターを手に取る。火の灯ったそれをそっと近づけると、彼は嬉しそうに顔を寄せていた。煙草に火がついたのを確認して、ライターの火を消す。そのまま彼が無造作に置いた煙草の箱のそばに置いて、柔らかいマットレスへ体を沈めた。甘くて鈍い倦怠感の中、体を起こし続けるのはキツかったのだ。
 彼はベッドに全身を預ける私の頭を撫でた。その手つきはさっきまでの情熱的な触れ方とは違って、人の温もりを感じた。その無責任で中途半端な優しさが、今は無性に悲しくて寂しかった。

「優しくしないで」

 これ以上、私を夢中にさせないで。

 目に溜まった涙を堪えて呟いていた。きっと彼には言葉の裏の意味までは伝わらない。その証拠に、彼は私に向かってニヤリと口角を上げただけだ。
 煙草を消して、私の上に覆い被さった。近づいてくる唇を抵抗なく受け入れた。そっと目を閉じて、体全体が溶けてしまいそうな感覚を味わう。
 首に回そうとした手を絡め取られて、ベッドに押さえつけられた。そのうち私をうっとりさせていた唇が、耳や首に移った。くすぐったくて堪えられず過敏に反応して、体が震えた。そんな私を、彼はほんの少し笑った。

 心地良く痺れる刺激が脳内の大半を占める中、彼の左薬指に残った跡を撫でるたび、これが最後と考えた。



『優しくしないで』

5/2/2024, 5:01:28 AM

明度と彩度
感性とセンスの黄金比でバランスが整われてないと
ただの毒にしかならない視覚の栄養

『カラフル』

4/30/2024, 2:14:43 PM


 心配や苦労が一切なく、楽しく過ごせる場所。

 そこでだったら、

 ランダムグッズにて推しを一発で自引きできるのだろうか。

 チケットは全部当選するのだろうか。



 まぁ、こんな欲まみれには一生辿り着けない場所なんだろうな。

『楽園』

4/30/2024, 5:15:44 AM


 突然の強風に傘が煽られた。飛んでいかないように手元を両手でぎゅっと握りしめる。突風の割に強く吹き続ける風は、私を南西方向から強く押した。収まるどころかさらに強まっている。前へ踏み出そうとした一歩はもとに戻して、姿勢を安定させる。それでもたたらを踏んだ。ほんの数十センチ、車道に近づいた。これ以上押されないように足腰に力を入れる。
 最寄り駅までの平坦な道は、風が強い日に突如として牙を剥く。マンションが建ち並ぶその隙間からのビル風に、地下駐車場から吹き上げる風。その二つが合わさっている危険なポイントが一ヶ所あるのだ。
 初めてその現象に遭遇した時、傘が壊れた。コンビニのビニール傘だった。生地の部分が親骨もろともそり返り、中心から外れてしまっていた。ここまでバキバキに折れると、修復不可能だ。それ以降、傘は十六本の大きくて丈夫そうな太さを選ぶようにしている。
 大きい傘は風の抵抗をさらに受ける。歩くたびに一瞬浮いたんじゃないかと錯覚するくらいには。

 もしこの突風を受けて傘もろとも浮いたら。

 頭の中のイメージとしてはトトロたちが傘を持って空を飛んでいたあのシーン。ふわりと、でもあっという間に木の上へと飛んでいって、上空から畑や田んぼを見下ろす。あのシーンのような体験ができれば、爽快感で気持ちがいいのだろう。
 ヨタヨタと歩きつつ、傘から空を覗き見る。
 尖った電柱に張り巡らされた電線、高層のマンション群、背の高い木々。

 これ浮いたら絶対どこかに引っかかって地面に叩きつけられるパターンだ。

 実際に想像してしまってゾッとした。私は少し緩まった風を感じ取って、足早にその場を後にした。
 間違っても浮いてしまわないように、体を鍛えようと心に誓った。


『風に乗って』

4/28/2024, 3:46:03 PM


 毎晩目を瞑ると一瞬だけあなたに逢える

 こんな頻繁に逢えるのに
 目を開けた世界に君がいないとは
 信じがたく受け入れがたい
 

『刹那』

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