たかなつぐ

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3/22/2023, 8:14:32 AM

 テーマ『二人ぼっち』

 夕暮れの雨
 一人傘さし 少年が行く
 列なる蟻追い いつの間にやら離れ離れ
 
 古びたバス停
 雨漏りの屋根 うつむく眼(まなこ)
 黄色い長靴、昨日母と買いに行った思い出

 西の空
 雲が散ぢれて茜差す
 見上げる少年 足元には長い影
 止んだ雨音 黒い自分と二人ぼっち

 坊や 坊や 嬉し懐かし母の声
 駆け出す少年 影なる自分も引き連れて
 抱きつく温もり 重なる二つの影
 みんな揃って うちへ帰ろ

3/21/2023, 9:51:37 AM

 テーマ『夢が醒める前に』


 回れ右をして、左を向いたら叩かれる
 自由に動いていい。ただし、この仕切りの範疇で
 拭いきれない閉塞感で、生きることが嫌になってくる

 他者の一歩が、自分の一歩と同じとは限らない
 自分の一歩が、隣のやつの一歩と同じなわけがない

 大人になってようやく分かり始めた
 最初から、仕切りなんてなかったんだって
 地面に描かれただけの白線を、馬鹿みたいに忠実に守ってたのは
 他でもない自分だった

 白線を踏んでみた。右足、左足も外に出した
 地面には、他にもたくさんの白線が俺を取り囲んでる
 けれど前を向けば、どこまでも続く広い世界があった

 俺は一つの夢を描いた
 白い線が縄になって、また俺を捕まえようとする
 
 どこかから聞こえる『どうせ無理だ』の声
 子供の頃から染み付いた「大人の言うことを聞きなさい」の魔法
 ガクガク震える足を抑えつけ、俺は心惹かれる方へ駆け出した

 周囲が言うみたいな、挫折する現実が待っていてもいい
 失敗したときは、どうか心ゆくまで笑ってくれ

 だけど今は、もう少しだけ足掻きたいんだ
 
 例え夢物語に終わったとしても
 次の現実を受け止めて、また新しい夢を描いてやる
 今はもう、白線は見えない

3/20/2023, 9:45:10 AM

 テーマ『胸が高鳴る』


 子供の頃、親にダメだと言われたことをやってみた

 スーパーで好きなだけお菓子を買ったり
 同じ服で数日間生活してみたり
 一人で好きに歩いて、行った先のカラオケで思い切り歌った

 やりたいと思ったことを素直にやってみたら
 なんとなく「生きてるな」って感じがした
 
 子供の頃のまま消化不良だった気持ちが、少しだけ解けた気がする
 
 胸が高鳴るっていうほどじゃないけど、じんわりと温かくて
 子どもの頃の私が、楽しそうに笑ってるのがみえた

3/19/2023, 9:45:40 AM

 テーマ『不条理』

 不条理:道理の通らないこと
 
 私にとっての最大の不条理
 幼稚園年長の頃『こ○も○ャレンジ』の小学校特集見て
 「学校行きたくない!」って死ぬほど泣いたのに

 来年「学校に通う」以外の選択肢が用意されてなかったこと
 今でも「小学校楽しい!」って笑顔で言える人は宇宙人に見える
 

3/17/2023, 1:35:57 PM

 テーマ『泣かないよ』

 中学校からの帰り道。アカリが公園のそばを通りかかると、弟のコウタが一人、ベンチでうつ向いているのが見えた。
 秋の夕暮れが空を茜色に染める。アカリの着ている白いセーラー服が、夕日の赤と混じってピンク色に変わっている。

「コウタ、どうしたの」
 声をかけると、彼は浮かない表情で私の方を見た。
 頬と膝を擦りむいて、Tシャツの首元がよれている。喧嘩をしたんじゃないかと少し心配になったが、コウタからの返答は
「なんでもない」の一言だった。
 ベンチから立ち上がり、家の方へ歩きはじめる彼を、アカリは後ろから追いかけていく。
「膝の傷、痛くない?」
「別に」
 そっけない態度を取るコウタに、アカリは何か、言いたくないことがあるのかもしれないと思った。
「傷口からバイ菌が入るから、家に帰ったら消毒しないとね」
 ひとまず、怪我の心配をしていることだけ伝えると、コウタは急に立ち止まった。
「……喧嘩した」
 ぼそりと、小さい声が聞こえた。
 その後は何も言わなかったので、アカリはただ黙ってコウタの小さな肩を見た。小刻みに震えて、何かをこらえている様子だ。

「辛い時は、泣いたっていいんだよ」
 もちろん、弟を気遣っての言葉だった。しかし彼はムスッとした顔で「泣かないよ」と首を振る。
 何で、と尋ねると、コウタはうつむき加減でぼそぼそと話しはじめた。
「泣いちゃったらさ、相手の顔が見えないじゃん。そいつがなんでバカとか言ったのか、ちゃんと見てたいんだ」

 そうか。弟は誰かにバカって言われたのか。本音では悲しいし、悔しかっただろうに。それでもコウタは、相手のことを知ろうとするんだね。
 小学校高学年にあがったばかりだというのに、姉の目には、弟の背中がやけに大きく見えた。

「そっか。コウタは強いね」
 照れたのか指先でぽりぽりと頭を掻いて、彼は小走りに先へ行ってしまう。
 顔が見えないくらい離れた向こう側で、彼が服の袖でこっそり目元を拭うのが見えた。
 泣いて彼の耳が赤く染まっているのを、私は夕焼けに染まる秋空のせいにした。

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