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7/18/2025, 5:14:25 PM

「Today is a special day!」

 その言葉と共に、クラッカーが鳴らされる。テープの雨を浴びながら、僕は目を丸くした。

「いきなりどうしたの?」

 困惑しながら訊ねる僕に、君は笑ってこう言った。

「だって今日は君が生まれた日で、君が一年間生き抜いた日だよ。お祝いしなくてどうするのさ」

「どうするのって言われても……」

 誕生日ではしゃぐような時期はとうの昔に過ぎ去った。だから、誕生日を祝われるのは、なんだか恥ずかしい。
 そんな様子を察したのか、分かってないなぁと呟きながら、小さな子供に教えるように話す。

「一年間を生き抜くのって、実はとっても大変なことなんだよ。だから、それを成し遂げた君は偉い!」

 そして穏やかな笑みを浮かべて言葉を続ける。

「また一年間生き抜いてみせて。そうしたら、また祝ってあげるから」

「……本当に祝ってくれるの?」

 疑うような眼差しを向けて訊ねる。そんな僕に、君は満足そうな表情で。

「もちろん!」

 そう自信満々に言った。

「でもその前に、まずは今年の分を祝わないとね」

 ケーキは何が良い? と箱を開けて訊ねる君に、僕は苺のショートケーキと応える。

 誰かに誕生日を祝われるのは、少しこそばゆい。でも、君が祝ってくれるなら。

 また一年間、生き抜いてみようと思うんだ。

7/17/2025, 3:47:12 PM

 そっと吹いた風に、揺れる木陰。そこで少し休憩をする。

 木陰は厳しい日差しを遮ってはくれるけれど、肌にまとわりつくような暑さを和らげてはくれない。

 暑くなる世界、木陰では涼むことができなくなった夏。

 もうこの場所に腰をかけて、本を読むことはないのだろう。それを寂しく思いながらも、やはり暑さには耐えきれず木陰から出る。

 ここに居続けては命が危ない。

 クーラーの効いた図書館へ向かうため、その場を後にした。

6/12/2025, 3:45:55 PM

「I love you」

 君に伝えてみた。直接的な表現は恥ずかしいから「月が綺麗ですね」なんて言葉もあるけれど。僕にとって詩的な言葉を言う方が恥ずかしくて。ストレートに気持ちを伝えた。……案の定、「直接的すぎない?」と言われたけれど。

 君はクスッと笑って。

「I love you too」

と応えてくれた。

 

6/11/2025, 3:59:16 PM

 傘にあたってぽつぽつと鳴る雨音は、タイミングも、音の大きさもばらばら。

 でも、その不規則性が癖になる。

 静かな雨の中、突然開かれた一期一会の演奏会。目を閉じて、そっと耳を傾けた。

6/10/2025, 3:54:20 PM

 美しいの価値観は人それぞれで違う。

 だから、僕が美しいと感じたものを、誰もが美しいと感じるわけではないし、逆に誰かが美しいと感じたものを、僕は美しいと感じないかもしれない。

 それでも、今こうしてひたむきに努力して、苦しみ、もがきながらも夢に向かって前に進もうとする君の姿は。

 たとえ世界中の誰もが顧みなかったとしても。

 僕は「美しい」と感じるよ。

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