ー呼吸ー
もう考えないでよ
周りのことは考えないで
君は相手が傷つかないようにいつも言葉を選んでいる
人の気持ちを考えることができる優しい子だ
でも、それは一旦やめよう
誰かを傷つけるとか、そんなこと考えなくていい
だって君が一番傷ついてるじゃないか
うまく説明しようとしなくていい
言葉がまとまっていなくていい
良い言葉に変えなくていい
汚い言葉でも良い
今ある感情をそのまま吐き出して
きっとその言葉が、一番痛々しくて、美しいよ
僕しか聞いていないんだ
誰も君のことを悪く言うやつはいない
だから安心して心の声を叫んでよ
お願いだから、君の言葉を消さないで
ー本当の君ー
扉を開けばまた扉
どこまで続いているのか分からない
扉を開くたびに見えてくるのは
優しくて明るい光景
そして、とても暖かい
なのに、分かりづらいくらい少しずつ
色鮮やかな部屋が色褪せていき、
物や装飾で飾られている部屋が殺風景に変化している
そして、君が、どんどん小さくなっている
そうか。ここは君の心の中なんだね
いつもの笑顔が消えていく
前を向いている目は下を向いていき、
姿勢が正しい君の背中は丸まり、肩も下がっていく
ようやく辿り着いた最後の部屋を開けた時、
君は広い部屋に一人で俯いて座っていた
ああ、やっと「本当の君」を見ることができたんだ
だから僕はゆっくりと近づき、
壊れてしまわないように優しく君の背中を包み込みながら隣に座った
君が鍵を開けてくれたからここまで来れたんだ
ありがとう
これからは僕がずっと隣にいるから、
もう一人じゃないよ
その代わり、僕しかここの部屋を開けないでね
ー目ー
君の顔を見て泣きそうになった
僕の話を聞きながら君の目が泣いてるから
僕のせいだね
僕の感情が移っちゃったかな
ごめんね
ううん、違うね
ありがとう
僕の話を真剣に聞いてくれて
本当にありがとう
君の目が「今まで辛かったね」と僕に語りかけている
目で慰めてくれる人がいるだなんて思ってもなかった
君の目が僕のずっとずっと深いところに届いたんだ
もっと強くなれるように努力する
もっと信じられるように努力する
もっと、もっと、頑張るから
僕の扉の中を見てくれませんか
ー平穏ー
君の世界に包まれていたい
君へ抱く「好き」という感情がこれほどまでに
暖かくて、心地よくて、穏やかなものと知ってから
もう、離れることはできないんだ
ずっとここにいたい
君はずっと笑っていて、
その笑顔を見て僕も笑顔になる
ここにいればずっと幸せでいられるんだ
誰にも邪魔されない僕らだけの世界の中にいよう