目が覚めるまでに
私の人生のうち1/4くらいは夢の世界にいる。
だけど、夢の世界の記憶は殆どない。
夢の中の私はどのような人生を歩んでいるのだろう。
楽しく過ごせていますように。
そんなことを考えながら、
今日も夢の中の自分にバトンタッチする。
病室
私の大好きな祖母が大病を患い、
隣の県の大きな病院に入院した。
私は毎週欠かさず通った。
最初は祖母に会えるのが単純に楽しみだった。
今日はおばーちゃんと何話そっかな?
なんて呑気に考えながら病室のドアをノックしていた。
でも、祖母は段々と弱っていった。
楽しかったはずのお見舞いが、辛くなって来た。
行く度に元気がなくなる祖母を見るのが怖い。
部屋に入ろうとすると心臓がドクドクする。
そして、祖母は緩和病棟という所に移った。
それはもう先が長くないことを示していると気づいた時から、死に対する恐怖が当時幼かった私を襲った。
とうとう祖母はベットから全く起き上がれなくなった。そんなある日、私は直感的に祖母と会えるのはこれが最後かもしれないと悟った。
だけど、だけど、その直感が受け入れられなくて、気づいてないふりをした。
そしていつものように
「また来週来るわーー」
とそっけなく言って病室を後にした。
来週は来なかった。
安らかに眠る祖母を見て涙が溢れた。
あの日、ちゃんと感謝の気持ち伝えれば良かった。
あの日、喉の奥まで出て来てた言葉を飲み込んでしまったことを今でも後悔している。
なので、ここに書かせてください。
「私、今年二十歳になるよ。振袖姿見せたかったな。
おばーちゃんありがとう。今でもずっと大好き。」
澄んだ瞳
いつから私の瞳は濁ったのか。
気がつけば、世間を真っ直ぐ見れなくなっている。
僻み、妬み、自己顕示欲、憎悪、苛立、、
それらが街中に溢れかえっているように見えるのだ。
友人の褒め言葉すら、まっすぐ受け止められずに、
どうせそんな事思ってもないんでしょ?
って思ってしまう。
だけど、仕事帰りに見た夕焼け。
あれを目に捉えた瞬間、
この世の中は思ったより綺麗なのかもしれないと
感じることができた。
きっと、その瞬間、私の目は澄んでいた。
お祭り
俺が中学生のころ住んでた小さな町では、
山の上の運動場でお祭りがあった。
友達と屋台をふらふら回っていたあの時、
すれ違った。
そう、あれは確かに隣の席のあいつだった。
俺はあいつのことが苦手だった。
学級委員長をしているあいつは、ザ真面目というか
冗談が通じないというか、
こっちが話しかけても態度がそっけない。
休み時間も教科書をひとりで読み込んでいて、
笑っているところなんて見たことない。
だけど、すれ違ったあの瞬間、
彼女は笑っていた。
色白の肌に似合う紺色の大人びた浴衣を身につけ、
長くて綺麗な黒髪をふんわりと束ねた彼女は、
目を細めて優しい笑顔を一緒にいる友人に見せていた。
ーなんだ、笑うんじゃん。
あの瞬間からなんだ。
俺の中であいつのことが気になり出してしまったのは。
あの笑顔を俺にも見せてくれって
不覚にも思ってしまったんだ。
神様が舞い降りてきて、こう言った。
「お前らの願いは沢山叶えてあげているのに
私の願いは誰も叶えてくれない。」
ー神様、貴方の願いは何でしょうか?
「正月にゆっくり過ごすことだ。
お前らが押し寄せるから正月は慌ただしい。
私だって大学駅伝を応援したいのだよ。」