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お祭り

俺が中学生のころ住んでた小さな町では、
山の上の運動場でお祭りがあった。

友達と屋台をふらふら回っていたあの時、

すれ違った。
そう、あれは確かに隣の席のあいつだった。

俺はあいつのことが苦手だった。
学級委員長をしているあいつは、ザ真面目というか
冗談が通じないというか、
こっちが話しかけても態度がそっけない。
休み時間も教科書をひとりで読み込んでいて、
笑っているところなんて見たことない。

だけど、すれ違ったあの瞬間、
彼女は笑っていた。
色白の肌に似合う紺色の大人びた浴衣を身につけ、
長くて綺麗な黒髪をふんわりと束ねた彼女は、
目を細めて優しい笑顔を一緒にいる友人に見せていた。

ーなんだ、笑うんじゃん。

あの瞬間からなんだ。
俺の中であいつのことが気になり出してしまったのは。
あの笑顔を俺にも見せてくれって
不覚にも思ってしまったんだ。













7/28/2024, 3:27:20 PM