夫婦
価値観が違うという理由で別れる人が多いらしい。
価値観が違うのってしんどい。
けど、その違いを楽しめるようになりたい。
いつからなんだろう。
自分の基準がいちばん正しいと思ってしまうのは。
夫婦もそれぞれのバックグランドを持っている。
生まれた場所、育てられた人、出会ってきた人、学校や仕事、全部違う。
そんな2人が生活を共にするって、そりゃ難しい。
だけど、だからこそ、面白い。
日々新しい気づきがあって、新しい葛藤が生まれる。
んん?ってなる度に、
自分と向き合う。相手とも向き合う。
そうやって、新しい価値観を2人で作り上げる。
なんて人間らしい、素敵な成長なんだろうか。
「キャンドル」
宿泊学習最終日の夜。
僕たちは真っ暗な体育館に集められた。
そして1人一つずつ、キャンドルが渡された。
「キャンドルナイト」とやらが始まるらしい。
クラスの女子達は、騒ぎながら、
こぞってスマホで写真を撮りはじめる。
でも、隣の席の酒井さんは
ひとり真剣な表情でキャンドルを眺めてた。
普段はうるさくて騒がしいくせに。
蝋燭の火で照らされた
その横顔を見たあの日から、
僕は君のことが気になり出したんだ。
【雨に佇む】
(個人的に好きな話が出来たので、少々長いですが是非お読みください笑)
今はテスト期間中なので部活は休みだが、
県の選抜大会で大将を務める予定の絢音は、
武道場でひとり、竹刀を振り続けていた。
この大会で優勝すれば、全国への切符が手に入る。
ここで手を抜いてどーすんや。
鏡に映る自分と見つめ合いながら
ただひたすらに振り続けた。
気づけば、時計は午後8時を指していた。
手にはいくつもマメが出来て、血が滲んでいた。
流石に帰らなあかん…
一礼し、急いで竹刀を片付けていると
急に雨が降り出した。
うわ傘持ってないねんけど。
しゃーない走るか。どうせ既に汗でビタビタやし。
そう思って絢音が一歩を踏み出そうとした瞬間、
「傘、入るか?どうせ忘れたんやろ。アホやな。」
後ろから優斗が声をかけて来た。
彼はいつものように図書館で勉強していたらしい。
反射的に「うちアホちゃうんやけど!!」
と怒鳴る。
「まぁまぁそう怒るな。
せっかく優しさで言ってあげとんやぞー?」
優斗はそう言いながら傘を絢音の方に傾けて来た。
そして、ゆっくりと歩き出す。
「…アリガト」
くそ、何でコイツは自然に相合傘できるんや。
恥ずかしくないんか!?
コイツ勉強しすぎてついに脳がバグってしまったんか?
それとも恥ずかしいのはうちだけなんか?
うちがアンタのこと好きなん知ってて
わざと揶揄って来てるんかぁー!?
この秀才やろうめ!!
あーあ、こんな事になるなら
シーブリーズでもぶっかけときゃよかった。
絶対汗臭いって思っとるやん。
髪もベタベタやし。くし忘れたし。
絢音の心中など全く知らずに
優斗は呑気に歩き続ける。
「今度でかい大会でるんやろー?
俺応援しとるけんな。今日も自主練しとったやろ。そーいう絢音の真面目なとこめちゃ好きやで?
やっぱ絢音は剣道しとる姿がいちばんかっこええ。」
くそ、もーなんやねん。
なんでコイツはこうサラサラと
こっ恥ずかしいこと言えるわけ??
てか、かっこええよりかわいいって言えよ…
え、今の自分流石にキモイか。
あーもうほんとコイツとおると調子狂う!!
「あんたに応援されんでも頑張るわ!!!」
絢音はこう言うのが精一杯だった。
向かい合わせ
「あの同窓会で
あなたと私はたまたま向かい合わせになったやん?
その時ね、私思ったのよ。
多分私はこの人と家族になるわって。」
そう言いながら、向かいに座る妻は
僕の作ったハンバーグを頬張っている。
僕はいつものように間抜けな顔で
「ふーーん」と相槌を打つ。
…僕も思ったよ。
そんな事は恥ずかしいから言わない。
やるせない気持ち
あの夜、父が傷害事件を起こした。
酔った父は偶々店にいた見ず知らずの男性に殴りかかったのだ。
父はそのまま警察に連行されていった。
次の日から俺の生活は一変した。
友達からは白い目で見られた。
近所の人の冷たい視線が痛かった。
バイト先はクビになった。
俺は父を憎んだ。
俺自身は何も悪いことなんてしてないのに。
俺に父と同じ血が流れていると考えると恐ろしい。
だけど、
心のどこかで父のことが好きなままの自分もいる。
憎しみの気持ちでいっぱいのはずなのに。
やるせない。