まことのよるのなか。遠くから、音が響いて聴こえてくる。あの音は貨物列車の音。これはバイクの音。この音はなんだろう?なんでこんな時間にカラスが⁈
夜の中でも本気の夜中。一つの音もすごく響いて、悪いことをしたような気になり、周りをうかがってしまう。あまりにも音も気配もないと、誰もいないみたいで少しだけ寂しくて、ちょっとだけ怖くて。明かりのついている窓を見つけると、仲間を見つけたみたいで、少しだけ嬉しくて。
そんな時間まで起きてないで、夜のうちに眠ってしまえばいいのに。けど、夜中、真夜中、深夜。時間も音も止まったようなその中で、じぶんだけが動いているあの独特な感じが好きだ。そのまま起きてて、夜明け前のうっすら明るくなった空を見ながら、静かな朝の音を感じるのも好きだ。
まことのよるのなか。そんなことを考えながら、明日のために今日も寝る。明日まで起きていると、明日は一日何もできずに終わるから。おやすみ。おはよう。そしてまた、大好きな夜を迎えよう。
明日世界がなくなるとしたら。
そして、もしも本当に願いが叶うと言うなら。
私は「明日、世界がなくなりませんように」と願おう。
明日が今日になっても、同じように願おう。
「明日、世界がなくなりませんように」
そう繰り返し過ごせば、世界がなくならないと言うなら。
毎日毎日、呪いのように繰り返そう。
だって・・・
『世界が終わるまでは、離れることはない』
あなたがそう言うのだから。
白い枕、白いシーツ、白い布団カバーに白いベッドのフレーム。壁も白い・・・そうか、ここは病室か。
看取りなんて物は、お互いの運が良くないとできないものだと思っている。「何月何日の何時に死にます」と宣告されていれば可能かもしれないけど。大抵の場合間に合わないか、死体直前の人の横で、それなりかそれ以上の時間を待たされる。私の場合は前者のようで、周りに人の気配はない。寂しいけれど、気を遣わなくていいと考えると、気分的には楽だ。
一週間前くらいからそんな気はしていた。医者や周りの雰囲気、何より自分の身体だし。なので、ブログを書いて予約投稿しておいた。その日時にパソ前にいたら変更すればいいだけだ。その文章を読めば、わかる知り合いには伝わるはずだ。私が前から言っていた事だから。
『ありがとう。
あゝ、楽しかった』
見上げた時空に見えたのは、消える直前の流れ星の尾だった。もう一度流れないかと、濃い群青の空を見上げる。
次に流れたら何をお願いしよう。ワクワクしながら見上げ続ける裏側で、お願いしたい事なんて何も思い浮かんでない自分が、自嘲気味に下を向く。
ほとんど諦めて生きてきた。欲しいものも、食べたいものも、行きたいところも。お金をくださいと願いたいが、そういう下世話なお願い事は、流れ星には似合わない気がして、できそうにない。
星が流れた。ただ、流れて行くのを見ていた。明日もいい日でありますように。空を見上げるのをやめ、家へと歩き始めながら祈った。