杏鈴

Open App

見上げた時空に見えたのは、消える直前の流れ星の尾だった。もう一度流れないかと、濃い群青の空を見上げる。

次に流れたら何をお願いしよう。ワクワクしながら見上げ続ける裏側で、お願いしたい事なんて何も思い浮かんでない自分が、自嘲気味に下を向く。

ほとんど諦めて生きてきた。欲しいものも、食べたいものも、行きたいところも。お金をくださいと願いたいが、そういう下世話なお願い事は、流れ星には似合わない気がして、できそうにない。

星が流れた。ただ、流れて行くのを見ていた。明日もいい日でありますように。空を見上げるのをやめ、家へと歩き始めながら祈った。

4/26/2023, 7:42:03 AM