ある夏休みの夕方、いつも通りの学童からの帰り道。私は家の方向で決められた4人の班の仲間内で決められた、あるルールに沿って帰っていた。
影だけ踏んで歩く。
暑い夏はできるだけ日陰を歩くようにするが、それがいつの間にかゲームになっていた。
下校路の最初の方は簡単だった。道が狭く影が多い。
しかし、大きな道に出ると途端に難しくなる。私たちはときに走る車の影を利用して、時に友人の影を利用して着実に進んだ。
暑い。
そこで気がついた。
なぜずっと日陰にいるのに暑いんだ?
そう、小学生であった私は、陰の涼しさは知っていたが、理解していなかった。
足だけ影を踏んでいても顔に日が当たっていることに気づいていなかったのだ。
しかし、私はそれでも影しか歩かなかった。
ルールを破ったら負けだから。
意味もないのに守られ続けているクソルールが完成する手順を垣間見たような、そんな瞬間だった。
それはそれとして、今でも日差しを避けようと何となくなく影を踏んでは意味のなさを思い出すなどしている。
意味がないことで流した意味がない涙は恥じなくていい
月の光が君の瞳で反射してぼくの網膜に像を結んだ。
薄暗い道の上で、月→君の目→ぼくの目と進む一筋の光しか存在しないんじゃないかと思うくらい、ほかに何も見えなかったし、見ようともしてなかった。
母が、ココロオドルもジョジョの奇妙な冒険も知らずにココロジョジョルにハマっていてなんかウケた
何もうまくいかない日だった。
朝起きてから、帰って今晩酌するまでの全てが。
無気力感と裏腹に、出し切れなかったエネルギーが体の中から出ようとうごめいている気がする。
それをなんとかしようと、部屋の中を歩き回ってみる。
脚はなんか落ち着いてきた気がするが、あの感覚が腕に移動した感もある。
腕をぶんぶん回してみる。
バカみたいな動きだが、マシになってきた気がする。いや、腹に移動したか。
ぴょんぴょんはね回ってみる。
アガってきたな。ただ、頭にはうざったい感覚が残る。
まだダメなのか。
私は、部屋の中をグルグルと、腕をぶんぶん回しながら、ぴょんぴょんはね回って、一番勢いが着いた瞬間、力を込めて全身で窓を突き破った。
浮いた。
浮いてなかった。
着地した。キレイに。足を揃えて両手を上げて。
月を震わせんばかりの拍手が湧き起こった。
目が覚めた。ソファから転がり落ちていた。体が重い。まだ風呂に入っていないから体がベタつく。でも起き上がるのが面倒くさい。最悪だ。さっきのはなんだったんだ。そもそもこの部屋は1階だ。
床に散らばる衣類や書類を踏みつけながら、でんぐり返しした。立ち上がって手を広げる。なんか立てたな。風呂でも入るか。