【澄んだ瞳】
澄んだ瞳のあの人は
きっと心が透明なのだ
心が混沌とした僕の瞳は
きっと暗く澱んでいる
目は心の窓なのだ
【嵐が来ようとも】
灰色の雲が重く垂れ込んでいる
波は高く船を揺らし
生暖かく湿った風が
強く吹いている
背中をつたう冷たい汗は
熱さのせいか
恐怖のせいか
男は船の帆をたたみ
天を仰ぐ
ポツポツと重たい水滴が
冷たく男の額を濡らす
船はいっそう激しく揺れて
思わず舵にしがみつく
いつの間にか暑さを忘れ
雨に濡れた拳は冷たく
男は無力さにうちひしがれる
大自然の中で人が
出来ることなど何もない
ただ落ちた枯れ葉のように
揺蕩うことだけ
波はいよいよ高く
海は大きくうねっている
恐怖に締め付けられた男の喉から
小さく震える、
しかしはっきりとした声が聞こえる
それはラテン語のあの言葉
Fluctuat nec mergitur
たゆたえども沈まず
沈まなければ良いのだ
激しく雨に打ち付けられ
吹きすさぶ風に翻弄されても
しっかりと舵にしがみつき
惨めに震えていればいいのだ
沈みさえしなければ
また帆を広げることができる
ふたたび進むことができる
この空はいまは敵だけど
やがて、ふたたび優しい風となって
前に進むのを助けてくれる
雲の切れ目から
ほらみて光が
【お祭り】
右手にわたあめ
左手に水風船
お気に入りの浴衣
帯には団扇を挿している
いつもの街
いつもの商店街、広場、神社が
姿を変える誰そ彼時
高揚したたくさんの人が
それは本当に人なのか
やきそばの匂い
わたあめをちぎって口の中に入れる
溶けていく熱さと甘さが舌を焼く
人混みの中をかけわけて
わたしは迷子
お面をつけてすれ違う
あれは果たして人なのか
闇の中
明るく赤くまぶしい屋台
元気な的屋の兄さんが
忙しくたこ焼きを焼いている
べっこう飴、チョコバナナ
あまりにも魅力的過ぎる非日常
人ならざるものが混じっていても
わたしはきっと驚かない
お祭りは神様のためのものだから
【神様…(以下略)】
「光あれ。」
【誰かのためになるならば】
誰かのため、なんて
大それたことは考えていないけど
今日も文章かいて投稿する
わたしと同じ寂しい人に
なぐさめの言葉を届けるために
誰かのため、なんて
大それたことは考えていないけど
そして、わたしも受け取る
わたしに似た誰かが書いた言葉を
こうして同じ時間
同じテーマを考えている人が
何人もいるって事実が
心を少し暖かくする
誰かのためというわけではないけれど
わたしの言葉が誰かに届き
慰めになっていることを
仄かに期待して苦笑い
誰かのためになると
産まれてきたことに意味ができるみたいで
あこがれる