いのちだいじに

Open App
4/19/2023, 12:33:01 PM

もしも未来を見れるなら

もしも未来を見れるなら、わたしは自分の死に際が見たい。いつ、どこで、どんな風に死ぬのかを知りたい。いつかは死ぬって分かるけどそのいつかが分からないから怖い。明日かも、一ヶ月後かも、もしかしたらあっという間に時間が過ぎちゃって、おばあちゃんになってからなのかも。まあ、あんまり長生きはしたくないかな。誰かの負担にならないうちに死にたい。そう言ってると大抵時間の進みが早く感じるんだけど。


たくさんの人は病院とか施設とか、自分の家で息を引き取る。病気でどこかの臓器がやられちゃったり、事件や事故に巻き込まれたり、寿命だったり、自らを殺めたり。死因も大事だよね。なるべく苦しまないのがいいな。欲を言えば眠っている間にぽっくりいけたらいい。

でも、最期は大切な人と話をするのかも。いや、したいって思うのかな。思い出話に花を咲かせたり、本当はもっとこういうことがしたかったとか、ないものねだりしてこまらせたり。死ぬのが怖いって弱音を吐いたり。本当はもっと生きたいって本音を言ったり。

もしも未来を見れるなら、わたしは死に際が見たい。死ぬときに皆に囲まれて穏やかに死にたい。誰かが言ってた。過去と同じように未来は変えられないって。なら、わたしの願いが叶っているのかを確認するくらい許してほしい。大切な人がわたしをおいて先に逝っていませんように。

4/18/2023, 1:23:43 PM

無色の世界

死後の世界ってどんなものだと思う?天使が飛んでて転生を待つような天国?生前の行いを悔い改めて罰を受ける地獄?おばあちゃんが手招きする三途の川?

アニメや漫画はわたしたちが想像するあの世をよく描く。華やかであったり鬼や悪魔がいたりする。でも、本当はね、死んだあとはなにもないんだ。色のない世界で自分が動いているのか止まっているのかさえ分からないまま、ただ次に生まれるのを待つ。

やることが無いと自然と思い出を振り返るんだよね。小さな頃の自分はこうだったな。あの日のあれは今でもずっと覚えていたな。最期は、……とかね。でも、段々と思い出せなくなる。初めは些細なこと。そこから、楽しかったことや辛かったこと。友達の顔や声、自分のこと。忘れたくなかったこともあったのに。それすらも記憶が消えちゃった。

今のわたしたちはこの世界みたいだね。色褪せた世界。色なんて無いけど。来世はこの世界が少しでも色が残るような人生にしたいな。色がつくのかはわからないけど、また次の人生まで暇になるのは嫌だから思い出をたくさん持っておこう。

ああ、時間みたいだ。ありがとう。つくりあげただけのわたし。いい退屈しのぎだったよ。…来世は鮮やかな人生になりますように

4/17/2023, 2:31:12 PM

桜散る

チリンッ

小娘。そなた何故ここにおる。さくらぁ?このような小さな花ごときになんの意味がある。すぐに散って消えてしまうこの花など。
良いか?ここはそなたのような者が来るものではない。ここはな、そなたが毎夜恐れ母に縋りつくほど嫌悪する、妖共がそこらにひそんでおるのだぞ。怖いのならば今すぐに立ち去れ。……帰り方が分からぬと?はぁ、近くの道まで送ってやる。もう二度とここには来るなよ。


ここに来るなと言われて翌日来るやつがいるか、この阿呆め。何の用だ。桜はほとんどが散ってしまったぞ。それにここよりもそなたのいく村に咲く梅のほうが綺麗だろうに。そなたは何故ここにくる。……答えぬのか?つまらんの。そなたでもないのに、考えることなど分かるわけがなかろう。さぁ、妖が活動し始める。はやく帰ることだな


知っておるか?ななつまでは神の子と。あれは間違いだ。ヒトの子が勝手に愛らしいそなたたちをそう呼ぶだけだ。そもそもヒトから生まれたというのに何故神が生まれるという勘違いをしたのか甚だ疑問だ。……違う?ほ、本当にただ愛らしいだけを比喩したと?ははは、そうなのか。ふふ、確かに拝んでいるところは見たことがないな。そうか、ふふふ、人間とは面白いな。

なぁ、そなたはいくつになる。そうか。もうすぐ、ななつだったな。なら、もうここには来られないな。安心しろ。記憶は消える。覚えていなくて不安になる必要もないさ。ここにいられるのはななつまでだ。そなたもヒトの子として生きることになるだけだ。ななつまではかみのうち。神からの祝福でできたそなたがいつまでも幸せであれるように心から願おう。そしていつか、……いや、なんでもない。ではな。



これがあやつの思い出か。ああ、美しいな。まるで満開の桜だ。せめて、この記憶が美しいまま散っていけ。さよなら、愛しい我が子。

4/16/2023, 2:17:35 PM

ここではない、どこかで


雲ひとつない晴天。空を見上げたのは久々だった。照りつける日差し。柔らかな風。すこしばかりの自然の匂い。なぜだか今日は異様に世界が輝いて見える。それは自身が死に近づいたからだろうか。

フェンスに背を預ける私。あと一歩前に歩けば私は解放されるだろう。魂を肉体から手放すと同時に人生という地獄を抜け出すことができる。死は怖くない。だが、生存本能が生を望んでいる。それが死ぬという行為を恐怖として認識させる。あと一歩。それでも私は、千里ほどの心持ちでなければならない。
呼吸が浅くなる。肩が上下し、額に汗が浮かんでくる。

ガチャリ

屋上の扉が開いた。誰かが来たみたいだ。まあ、私には関係がないけれど。

「何してるの!危ないよ。し、しんじゃだめだよ」

かわいらしい小柄な女の子。目に涙をためて必死にこちらを説得している。ありきたりな戯言。当たり障りのない決まり文句。なんだか、滑稽だな。他人のために泣いて、他人のために声をだして。なんて、いい子なのだろう。絶望したことないんだろうか。自ら命を絶ちたいと思うほどの経験をしたことがないんだろうか。なんて、浅はかなんだ。

「生きてたらね、必ずいいことがあるよ。今は悲しいかもしれない。もうやだってなるかもしれない。でも、でもね。そのあとは絶対に幸せになれるよ。ここじゃなくても、どこかできっとあなたを必要として、あなたが好きって言う人が現れるよ。だから、やめようよ」

こぼれ落ちた涙は宝石みたいに綺麗だった。あの子の心もこんな風に綺麗なんだろうな。彼女の方を振り向き微笑んでみる。あの子は綻んだ顔をした。

「ありがとう」

その瞬間、私は体を後ろに倒した。何も私を支えてなどくれない。ねえ、絶望ってこんな風なんだよ。体験してくれて良かった。さよなら、世界。来世は幸せになれますように。

ここではない、どこかで。




……離してよ。ばか。お人好し。……ありがとう。

4/15/2023, 1:36:17 PM

届かぬ想い

こんにちは!わぁ、えがおがとてもすてきだね!よかったらぼくとともだちになろうよ!
めがあったきみはぼくをやさしくだきしめてくれた。これからよろしくねって、まるでおひさまみたいなきらきらなえがおでぼくをむかえてくれた。
おうちにかえってからたくさんあそんだね。さいしょはあそびかたがわからなくてきみがたくさんおしえてくれたっけ。おままごともおひめさまごっこもとってもたのしかった!ねるときにもいっしょだったね。これからまいにちあそぼうねっていってくれてすごくうれしかったよ。

小学校に入ってからは君のお友だちともよくあそんだね。ぼくは走れないから、おにごっこはできないよ。外でお友だちと、ふたりじゃできなかったあそびをして、君がたのしそうでちょっとさみしかった。でもね、たのしそうな君をみるのがいちばん好きだったよ。変わらないきらきらな笑顔がすてきだねって言えたら良かったな。

気が付けばもう中学生だね。背が伸びて立派なお姉さんだ。勉強が大変そうで遊ぶことが減っちゃったね。息抜きも大事だよ。疲れたらまた一緒に遊ぼう。ぼくはずっと待てるから。頑張って。応援してるよ。

久しぶりに君に抱きしめられた!でも、少し苦しいよ。……?ねえ、目から水が出てるよ。どうしてそんなに苦しそうな顔をしてるの?知らない名前を呼んでるね。彼氏って何?君は彼氏っていうのをつくれるんだね。でも、つくらなきゃよかったって思っちゃったんだね。ねえ、ぼくはここにいるよ。大丈夫だよ。……手は動かせないんだった。どうしたらまた笑ってくれるかな。また、君の笑顔が見たいよ。

最近、ずっと怒ってるね。どんってかばんを置いて、机とにらめっこしてるよね。あ、お母さんが呼んでるよ。ほら、ご飯だって。突然怖い顔で扉に大声を出す君。机を叩いて、それでもまだにらめっこは終わらないんだ。君を苦しめる『受験』ってやつ、大嫌い。ぼくがそれを倒せたらいいのにな。


思いきり階段を駆け上がる音がする。勢いよく開く扉。ぼくの名前を呼んで、手を掴んでくるくるダンスしてるみたいに回る。合格!合格したよ!嬉しそうに教えてくれる。そっか。君は自分で『受験』ってやつを倒したんだ。凄いなぁ。君はどんどん強くなるね。でも、やっぱり君の変わらない笑顔がぼくは大好きだよ。

部屋のものが少なくなっちゃった。君が描いた絵も取っちゃうんだね。ぼくを優しく抱きしめてゆっくり箱の中に入れていく君。ぼくとも、お別れかな。

あのね、ぼくね、君と一緒にいられてよかったよ。ずっと大切にしてくれて、たくさん遊んでくれて、きちんとお手入れしてくれてとっても嬉しかった。嬉しそうな君も悲しそうな君も怒ってる君も全部全部大切な君だった。ありがとう。ぼくと出会ってくれて。ありがとう。ぼくに愛をくれて。ありがとう。またね。



久しぶりの光。白くて眩しいな。また、君は大人になったんだね。隣の人はだあれ?とても優しそうな人だね。君が抱きかかえているその子は?出会ったときの君より小さいね。そっか。今度は君の赤ちゃんとお友達になれるんだね。こんにちは。……わぁ!笑顔が素敵だね。君にそっくり。ぼくと友達になろうね。これから、よろしく。

Next