あかつきあきら

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1/7/2025, 1:28:04 PM

追い風


 …こっち、来ないと、いいな…。
 襲撃してきた敵が、本丸の中を探している。
 僕達の背後に控える、主様を探している。
 …来るな、来るな…。
 ずっと、唱える、心の中で。間違っても声に出さないように。皆の士気を下げないように。
 でも、唱えること自体は、やめられない。
 …だって、こわいから。
 刀として打たれて、望まれて人の手に在って――何故か分不相応な逸話を持たされて。
 自分は、戦えるような刀ではないだろうに。
 それなのに何故か、数世紀の時を経て、人の身を得てここに居る。
 戦うべき武士として。

 …ああ、身が震える。
 …こわい……戦いたく、ない。
 だって、痛いんだ。
 痛いのなんて、誰だって嫌な筈なのに。ここでは、そして今は尚のこと、そんなことは言っていられない。主様を護るために。
 それでも――こわいものは、こわい。止められない。

 …あ。 
 主様の脇に控えていた虎くんが小さく唸って身を起こす。僕達の感覚は繋がっているから、同じものを感じたのだとわかる。
「…きましたね」
 今剣くんが構えを正す。応じて、切国さんも迎撃の姿勢を取る。僕を加えてこの三人が、主様の最後の砦だ。
 …いやだな。
 戦うのも、痛いのも――この期に及んで、それを嫌がる僕も。
 それでも、死ぬのも、それ以上に主様を喪うのも、もっといやだから――

「五虎退」
 ふと、主様が名を呼んでくれた。
「今剣、山姥切国広」
 まっすぐな目でこちらを見て。
「頼みましたよ、私の刀たち」
 …そう言って、いつものようににこりと笑った。

 はい、と、応、がみっつ重なる。
 他の二人と一緒に、僕は己が身の鞘を払った。


#002
#刀剣乱舞

1/7/2025, 2:59:13 AM

君と一緒に

 少し先を歩く君の背中を眺めた。
 大剣を振り回す力を秘めた大きな背中。
「アルド」
「ん、呼んだか?」
 足を止めて振り向く君は、ほのかに笑んでいて。
 ああ、嬉しいなって。
「ごめん、なんでもない」
「…そうなのか? 何かあったら言ってくれよ」
「うん、ありがと」
 わたしの返事にひとつ頷いて、彼は周囲を見回し仲間の様子も確かめる。
「ノーナ、本当に大丈夫なの?」
 聖衣に身を包んだ、中身は大人な少女二人が早足でやってきて両脇に並んだ。少し首を傾げて、わたしを見上げるその目は、共に心配の色。
「貴女はすぐに無理をするのだから」
「まったくなのだわ。辛かったら、すぐに教えるのだわ」
 返す言葉もない。それもこんな歳下の少女に言われては尚更。
「大丈夫だよ、メリナ、チルリル。でも、ありがとう、気をつける」
 笑って返すと、まだ少し疑いを残してはいるものの、彼女達はわかってくれたようだった。
 やっぱり、嬉しいなって、思ってしまう。
 先の見えないこの道を、進むのが独りきりではないことが。
 これから、いつか一人になっても、決して独りではないと信じられることが。
 君と、君達と、ずっと一緒に進めるということが。

#001
#アナザーエデン